【プレーオフ勝者】グレコローマン74kg級・鶴巻宰(自衛隊)【2009年6月21日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


 2007年世界選手権代表の鶴巻宰(自衛隊)が本戦で足元をすくわれながらも、プレーオフの末、決勝で敗れた金久保武大(日体大大学院)にリベンジ。2年ぶり2度目となる世界選手権への出場を決めた。

 鶴巻にとっては厳しい本戦となった。危なげなく勝ち上がって迎えた決勝は、昨年12月の全日本選手権決勝と同じ組み合わせ。力の差を見せつけたかったであろう鶴巻は、スタンド戦からアグレッシブに攻めたが、本人が「空回りしてしまった」と悔やむように、これが逆効果。

 バランスを崩した瞬間を金久保につけ込まれ、第1ピリオドを失ってしまった。第2ピリオドを奪い返し、迎えた第3ピリオドは両者ともにポイントを奪えないまま残り30秒のグラウンド戦へ。総ポイントの多寡によって攻撃権を握った金久保が、防御のポジションを選択。30秒を守り切って1点を獲得する作戦を選んだ。

 すると、ここから試合は意外な展開に突入した。再スタートにあたり、レフェリーは両選手の動きに対して1度ずつのフライングの注意。その後、またしてもタイミングが合わず、一時は防御の金久保のフライングとみなされ、鶴巻のポイントかと思われた。

 しかし、3審判が意見を出し合った末、最終的には鶴巻のフライングとなり、コーションによってポイントを獲得した金久保が逃げ切って勝利を収めた。

 かなり落胆した鶴巻だったが、ここで腐っているようでは、オリンピック出場などおぼつかないと自分に言い聞かせたのだろう。プレーオフまでにしっかり気持ちを切り替え、今度は危なげない試合運びで勝利し、世界選手権へのキップを確保した。

 「反則(フライング)に関しては納得のいかない部分もあったけど、早く攻めてしまった自分も悪い。今日の良かったところ? ないですね」。世界的に層の厚いクラスで2012年ロンドン五輪を目指しているだけに、試合後のインタビューでは反省しきりの鶴巻だったが、3月に入籍した真澄夫人が、スタッフに押されて急きょ会見に登場すると、その目尻は下がりっぱなし。

 「10月の初めに子どもが生まれるので、(9月末の)世界選手権ではメダルを取って見せたいと思う」と照れくさそうだった。


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