【特集】エリート教育の成果出る! JOCアカデミーの宮原優が2度目のV、白井勝太も2年生チャンピオンへ【2009年6月16日】



 6月13〜14日に行われた沼尻直杯全国中学生選手権(全中)でJOCエリートアカデミー(JWA)の第一期生である男子66s級の白井勝太(東京・稲付)が初優勝、女子46s級の宮原優(東京・稲付)が2年ぶりの優勝を遂げた。

■プレッシャーを振り払っての優勝…宮原優

 JWAは2008年からはじまったJOCの新事業。素質ある若い選手を東京・味の素トレーニングセンターに住まわせ、専門のスタッフが強化から日常生活まで管理し、トップアスリートを目指させる。味の素トレセンには寮母、栄養士もつき、日常生活まで面倒を見るなど文字通りの“エリート強化システム”だ。

 それだけに常に結果が求められる。負けてはいけないというプレッシャーもついてまわるだけに、精神的な強さも必要だ。今大会2度目の優勝を狙った宮原は、「『勝たなくちゃ』じゃなくて『勝ちたい!』と思うようにしていました」と素直な気持ちで試合に臨んだ。

 その結果、「今までの全中の中で一番動けた」と納得する試合運びで、2年ぶり2度目のVに加えてJWA初のチャンピオンとなった(右写真=決勝を闘う宮原)。3月の「クリッパン女子国際大会」(スウェーデン)ではチーム唯一の連覇を達成し、4月の全日本女子選手権ではスクールガールの44kg級で3連覇。カデット世代のエースとして結果を残している。

 同世代では無敵の強さを見せる。最近の黒星は、4月のJOC杯ジュニアオリンピックのカデット46kg級の1回戦で伊藤千草(埼玉・埼玉栄高)に負けたこと。伊藤は高校2年生のお姉さん選手だが、宮原は悔しそうな表情を見せ、意識の高さをうかがわせた。

 全中が終わったことで、3月から続いた試合も一区切り。3月のスウェーデン遠征が楽しかったようで、「海外遠征に行きたい」と笑顔で話した。

■2年生王者達成も、喜びはその瞬間だけ…白井勝太

 一方、男子66kg級では、JWAに宮原と同期入校の白井が決勝の舞台に立っていた。白井は昨年、1年生ながら準決勝に進出。準決勝、3位決定戦と敗れて表彰台を逃したが、JWAでの特訓の成果もあって、今年は無失点で決勝に勝ち上がった。

 決勝の相手は奥井眞生(和歌山・上富田)。奥井は“女子レスリングのパイオニア”佐々木美憂さん(旧姓山本)の長男・佐々木アーセン(東京・あざみ野)を倒していた。第1ピリオドは先制するも、後半に今大会初失点を喫してしまい、ラストポイントによりピリオドダウン。だが、第2、3ピリオドは少ないチャンスをものにして逆転勝利を奪った。

 優勝した瞬間、体中で喜びを爆発させた白井だが、「うれしかったのはあの瞬間だけ」と、すぐさま試合の反省点を洗い出した。「1点取ったあとは守りに入ってしまった」と、攻めることができなかったことを反省点に挙げた。

 2年生でチャンピオンの座についた白井は、JWA所属として抜群の環境の中、練習を積んでいる。「こういう環境を作ってくれた人たちに感謝しています」と何度も話し、今後の精進を誓った。(左写真=決勝を闘う白井)

 JWA2年目で2人のチャンピオンが誕生したことで、吉村祥子コーチはホッとした様子。レスリング指導歴は長いが、JWAのような特殊な選手を育てることは初めてで、開始当初は不安もあったようだが、「選手が確実に成長していますし、プロジェクトは順調ですね」と目を細めた。

 今大会、JWA所属選手は4人出場したが、うち2人は優勝に手が届かなかった。「優勝させてあげたかったのですが、まだレスリングを始めて1年と2ヶ月ですから、今ある力はすべて出せたと思います」と選手たちの労をねぎらった。

 JWAの選手が一般のクラブチームの選手に負けたり、失点したりすると、会場が一斉に沸きあがった。「それだけ、JWAの注目度があるということですよね」と事業の重責を確認していた。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)


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