【特集】霞ヶ浦高校が主要4大会連続優勝を達成! しかしインターハイ制覇に課題も【2009年6月8日】



 第55回関東高校大会が6月6・7日、千葉・佐倉市民体育館で行われ、フリースタイルで4階級を制覇した霞ヶ浦(茨城)が学校対抗戦で2年ぶり25度目の優勝を遂げた(右写真)。これで昨年のインターハイから主要タイトルを制覇し、年度をまたがっての“グランドスラム”を達成した。

 1年前の同大会は霞ヶ浦にとって史上最悪だった。1990年から2000年にかけてインターハイを11連覇するなど常勝チームだったにも関わらず、2007年のインターハイで負けてから、次々とタイトルを失い、最後の砦(とりで)だった関東大会の優勝旗も新鋭校の花咲徳栄(埼玉)に奪われた。無冠のどん底に落ちたのだ。

 不滅の金字塔を打ち立てた霞ヶ浦のブランドに憧れて入学してきた砂川航介主将たちにとって信じられない出来事だった。「当たりまえのようにあった優勝旗が一つずつなくなっていって、全部なくなったときはボーゼンとしました」(砂川)。その優勝旗を取り戻し、砂川主将は「一応、うれしいです」とホッとした表情を見せた。「ひとつ目の仕事はやり終えました」と無冠から4冠制覇の常勝軍団にまとめあげた砂川主将の、残る仕事はあと一つ。20度目のインターハイ制覇だ。

■順風満帆に見えるようで課題が山積み?

 昨年、関東大会の2ヶ月後に行われた埼玉インターハイで奇跡の復活優勝を遂げ、常勝軍団のブランドを取り戻した。その真骨頂が、3月の全国高校選抜大会だ。学校対抗戦の5戦を34勝1敗。うち13フォール、クリンチなしという過去まれに見る大勝で2年ぶり17度目の優勝を遂げた。

 全国の舞台であれだけの強さを出せたのだから、関東大会でもまれにみる圧勝と思われたが、決勝戦を前にした大沢友博監督の表情は厳しかった。「みんな、あんまりよくありません」と、3月の全国高校選抜大会では100点満点を与えたレギュラー陣に辛口採点をつけた。

 55kg級でチームのエース・森下史崇(左写真)や砂川主将を含む4階級で優勝を遂げ、表彰式は笑顔だった砂川主将だったが、チーム状況に話が触れると少し顔をしかめた。「3月の高校選抜以来、チームの気持ちが下がっていて、チームがバラバラになっています」と打ち明けた。自身も危なげなく優勝したが、「内容は良くなかった」と反省の言葉。

 84kg級の菊池崚と120kg級の前川勝利は、今回も決勝戦でライバルの花咲徳栄の選手に敗れて2位に終わった。両者ともに今季4度目の公式戦。2年生の前川は、1年上で全国高校選抜王者の岡倫之相手に連敗が続いているとはいえ、試合を重ねるごとに内容はよくなってきている。だが、菊池は同じ3年生の細谷翔太朗にストレートで敗れて3連敗してしまった(右写真)

 菊池は1年生で全国選抜王者になった霞ヶ浦の重量級エース。そのエースが何度も敗れるのはチームにとって大きな痛手だ。砂川主将は「練習では動きもいいし、ちゃんとできているのに、試合になると顔がこわばっている。まずは、(精神的に)整理して試合に臨んでもらいたい」とエース復活を要望した。

 どん底に落ちた昨年の同大会から一転、4階級で優勝し団体優勝を遂げた今年の霞ヶ浦は、外見こそ順風満帆に見えるかもしれないが、選手自身にとってはインターハイに向けて課題が浮き彫りになった大会となってしまった。8月のインターハイまでの2ヶ月間、今度はどのようにチームを立て直して、インターハイ20度目のVを飾るのだろうかー。

(文・撮影=増渕由気子)


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