【特集】力強かった拓大の軽中量3階級…2006年を超える黄金時代をつくれるか【2009年5月23日】



 5月20日〜22日に東京・駒沢体育館で行われた東日本学生リーグ戦は、Aグループ無敗で決勝に勝ち進んだ拓大がBグループ1位の早大を4−3で下し、4年ぶり3度目の優勝を遂げた。

 96kg級の藤本健治主将(右写真)が「自分の代で優勝できるとは思わなかった。悔いの残らない試合をすることが目標だったので、優勝はうれしいです」と話すように、拓大陣営は厳しい戦いを予想していた。

 ふたを開けてみれば、米満の後を引き継いだ全日本選抜選手権グレコローマン66kg級準優勝の岡本佑士が専門外のスタイルにもかかわらず負けなしの快進撃。74kg級の2年生エース・高谷惣亮との“中量級コンビ”は、米満が抜けた穴を感じさせないほど鉄壁だった。

 昨年の北京五輪トライアル代表の高谷は、74kg級で常に白星を計算できた。藤本主将にとって心強かったのは、60kg級の内村勇太と66kg級の岡本の3年生コンビが全勝でチームに貢献したことだ。

■逆境を跳ねのけ、優勝へのアシストを決めた66kg級の岡本 

 早大との差は、勝負への執念の差だっただろう。その真骨頂が、決勝戦の66kg級だ。先月のJOC杯ジュニアオリンピックでMVPを獲得した早大の石田智嗣と対戦した岡本は、石田の得意のタックルを完璧に封じて守りに徹した。3ピリオドともにボールピックアップにもつれ、すべて石田が優勢権を獲得したが、岡本は動じない。グレコローマンで培った重たい下半身を使って、第1ピリオドは石田のタックルをパワーでねじ伏せてバックを奪い(左写真)、第3ピリオドはタックルを切って、スタンド戦に持ち込んで30秒を耐えた。

 昨年11月に就任した須藤元気監督の本格的な初さい配ということもあって、大会はテレビ局が密着取材した。テレビ・カメラが常に選手たちに向いていたことで、藤本主将は「(目立つのが大好きな)高谷や岡本にとってはプラスだったと思う」と振り返る。石田との大一番で、ボールピックアップに恵まれなかった逆境をはね除けたのは、テレビ効果か。

■3つ上の”黄金時代”を超えられるか

 藤本主将ら現在の4年生は、1年生の時の2006年に団体戦3冠を経験している。フリースタイル55kg級全日本王者の湯元進一(現自衛隊)や、フリースタイル96kg級全日本選抜選手権王者の磯川孝生(現徳山大職)らが在籍していた当時の拓大は、“黄金時代”呼ばれている。2006年のシーズンオフには盛大に3冠パーティーが行われたが、藤本主将はその上を狙っていく。「今年は、できれば四冠パーティーをやりたいです」とグランドスラムを宣言した。あの”黄金時代”を超えられるか―。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)


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