【展望】山梨学院のV2を阻むのは、日体大か、早大か? それとも?…東日本学生リーグ戦【2009年5月19日】



 5月20〜22日、東京・駒沢体育館で東日本学生レスリング界最大のイベント、東日本学生リーグ戦が行われる。山梨学院大のV2なるか、日体大が2年ぶりに栄光を勝ち取るか、あるいは早大が今年こそ覇権をにぎり、1948年以来61年ぶりの優勝を手にするか。見どころをさぐってみた。(日程、組み合わせ

(文=増渕由気子)


Aグループ

■先鋒、中堅、大将と柱3つに力のある選手がそろう山梨学院大

 昨年の優勝メンバーから3選手が抜けるものの、山梨学院大は55kg級・小俣将太、66kg級・森川一樹、120kg級・ボリス・ムジコフの3人のポイントゲッターをかかえており、96kg級までの6階級で「最低3勝」が勝利の条件。最重量級に絶対のエースを擁しているのは心強い。何がなんでも学生四冠王のボリス・ムジコフに勝負を回したい。(山梨学院大の【特集】

■2年生エースが本領を発揮するか? 4年ぶりの優勝を目指す拓大

 4年ぶりの優勝を狙う拓大は、中量級のエースだった全日本王者の米満達弘が卒業し(現自衛隊)、エースは“タックル王子”こと74kg級の高谷惣亮。高谷は昨年、スーパールーキーと言われたとおり北京五輪予選の日本代表にも抜てきされ、めまぐるしいシーズを送った。一方で、明治乳業杯全日本選抜選手権で2位、全日本学生選手権でも2位と、なかなかタイトルに恵まれなかった。11月の全日本大学選手権で優勝を飾ったが、12月の天皇杯全日本選手権は体調を崩して欠場。不完全燃焼のシーズンになってしまった。

拓大の予想メンバー
55kg級 武  和将 4年
60kg級 内村 勇太 3年
66kg級 岡本 佑士 3年
74kg級 高谷 惣亮 2年
84kg級 岡  太一 3年
96kg級 藤本 健治 4年
120kg級 谷田 昇大 2年


 だが、西口茂樹部長は「体調はもう大丈夫」と話し、4月のJOC杯ジュニアオリンピックでは復活優勝を遂げた(左写真)。本調子に戻った高谷が、米満に代わって拓大を支えそう。

 高谷へつなぐ駒も充実している。60kg級の内村勇太は、昨年11月の全日本大学選手権で、全日本選抜選手権準優勝の小田裕之(国士舘大)をフォールで下して決勝に進出するなど成長が著しい。66kg級の岡本佑士はグレコローマンが専門だが、「米満先輩が抜けるのでフリースタイルの準備もしています」と、昨年の段階でスタンドに力を入れた練習を取り入れている。本職のグレコローマンでは、全日本選手権で66kg級に挑んできたオリンピアンの笹本睦(ALSOK綜合警備保障)を破るなど、「66kg級の新星」として注目を浴びている。フリースタイルでも“大物食い”を見せて、いい形で高谷に回すことができるか。

 内村、岡本、高谷の3人が白星を稼げば、山梨学院大との対戦で、120kg級のボリス・ムジコフの前に4勝を挙げることも可能だ。

■山梨学院大と同じく最重量級に勝負を持ち込みたい専大

 アジア選手権で新生ジャパンンを率いた佐藤満男子強化委員長が率いる専大は、120kg級にアジア選手権銅メダリストの荒木田進謙をエースに据えて挑む。84kg級の鈴木聖二が昨年の秋季新人戦で優勝するなど新しい戦力が伸びつつあるので、山梨学院大との対戦では、「日本の重量級エース・荒木田VS最強留学生・ボリス」の勝負で勝敗が決まる展開となるか。荒木田はボリス戦でアジア3位の意地を見せられるか。


Bグループ

 昨年の全日本大学選手権・学校対抗得点優勝の日体大と全日本学生王座決定戦で初優勝を飾った早大の争いになりそう。

■2人の日本代表メンバーと急成長の“先鋒”がチームを支える日体大

 過去最多の25度の優勝を誇るレスリング界の雄・日体大は、誰もが「毎年(団体戦の)四冠達成はいつもの目標。いつもどおりにやれば勝てる」と口にするほど意識が高い。今シーズンは、昨年の大学2冠王者で、今年5月のアジア選手権でシニアの日本代表デビューを果たしたばかりの松本篤史が主将としてチームを引っ張る(左写真=全日本合宿でしごかれる松本)

日体大の予想メンバー
55kg級 守田 泰弘 4年
60kg級 前田 翔吾 4年
66kg級 志土地翔太 4年
74kg級 山名 隆貴 3年
84kg級 松本 篤史 4年
96kg級 黒川  渉 4年
120kg級 渡辺 郁夫 4年


 ナショナルチーム・メンバーがもう一人いる。60kg級の前田翔吾だ。アジア選手権では北京五輪代表のキム・ヨンダエ(韓国)に勝利するなど、シニア・デビューながら3位決定戦まで進み健闘した。「減量はそれなりにあります」と話すとおり、連戦による疲れが心配だが、アジアで闘った成長の跡を学生のマットで見せつけたい。

 さらに、昨シーズン、北京五輪で銀メダルに輝いた松永共広(ALSOK綜合警備保障)のスパーリングパートナーを務めた55kg級の守田泰弘という心強い切り込み隊長がいる。松永の背中から多くのことを学んだ守田は、北京五輪直後の全日本学生選手権、翌月の全日本学生王座決定戦、11月の全日本大学選手権では1敗もせずに白星街道をまい進し、著しい成長を見せた。軽量級は各大学ともに層が厚いが、日体大の守田、前田の軽量級コンビが、ひとつ頭抜けていそう。

 66kg級で2年生からレギュラーを務める志土地翔太は今年最上級生。現在、守田や前田と同じくレスリング部の“幹部”だ。松本主将は「幹部は昨年のインカレでいい成績を残しています(2位)。幹部がちゃんと勝てば優勝できます」と話す。チーム目標の“いつもどおり”の一言で、団体戦四冠に向けて幸先のいいスタートを目指す。

■昨年の全日本学生王座決定選優勝メンバーが4人残る早大

 ここ数年、常に優勝候補の一角を占めていた早大は。今年は“大穴”から、優勝候補の“本命”として各大学からマークされている。その熱い視線を鋭く感じているのは太田拓弥コーチ。「日体大を倒せるのは、うち(早大)しかいない」と、今年こそ太田政権での“初優勝”に気合いが入っている。

 昨年は、長年の強化が実ってついに全日本学生王座決定戦で悲願の初優勝を飾った。その優勝メンバーが4人も残り、昨年の主力が抜けた階級も、すでに若手が育っている。どの階級も穴がなく、一番手の駒がそろっていることが最大の強みだ。

 レギュラー3年目となる55kg級の藤元洋平(4年)は早大唯一の同級の選手。日体大の守田や山梨学院大の小俣より、多くの場数を踏んできた。その経験の差で早大の1勝目を手堅く奪う。60kg級には全日本学生選手権60kg級2位の松本桂、74kg級には武富隆の出場が濃厚で、この3階級で確実に白星をマークしたい。

早大の予想メンバー
55kg級 藤元 洋平 4年
60kg級 松本  桂 3年
66kg級 石田 智嗣 2年
74kg級 武富  隆 3年
84kg級 山口  剛 2年
96kg級 殿村 幸城 1年
120kg級 鈴木 啓仁 3年

 また、山梨学院大や日体大の主力が4年生に対して、早大は若手の勢いが著しい。4月のJOC杯ジュニアオリンピックでは、フリースタイル7階級中3階級を制覇。60kg級は高校三冠王の肩書を持つ、スーパールーキー・田中幸太郎(京都・京都八幡高卒)、66kg級にはJOC杯を受賞した石田智嗣(2年)、84kg級には山口剛(2年)が危なげなく優勝した。JOC杯の勢いで、リーグ戦も“ワセダ”の風が吹き起こるか(左写真:JOC杯のメダリスト。左から殿村幸城=84kg級2位=、山口、石田、田中)

■昨秋の新人戦で復活の兆しを見せた日大

 紋谷哲平主将が率いる日大は、昨年の前半、タイトルに絡めず苦戦したが、全日本大学選手権では55kg級の須藤学と60kg級の紋谷哲平が3位に入賞。11月下旬の新人戦では66kg級の生田目達也や120kg級の相沢優人など両スタイルで4階級を制し、復活の兆しを見せた。さらに、インターハイ66kg級のチャンピオンの赤澤岳(埼玉・花咲徳栄高卒)が加入。6年ぶりのリーグ戦優勝へ戦力は整いつつある。


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