【特集】「世界へ向けて期待のできる団体2位」…栄和人・女子強化委員長【2009年5月9日】



 栄和人女子強化委員長(中京女大教)の下、新体制でアジア選手権に臨んだ全日本女子チーム。2004年アテネ五輪から世界を席巻した吉田沙保里、伊調千春・馨姉妹(いずれもALSOK綜合警備保障)、浜口京子(ジャパンビバレッジ)の“五輪戦士”抜きの若手チームでアジアとどこまで闘うことができるかが焦点だった。

 ”五輪戦士”の活躍がめざましい一方で、若手には海外の経験があまりなく、思わしくない結果も予想された。だが、結果は”五輪戦士”たちに劣らぬ活躍だった。(以下成績表)

48kg級 坂本真喜子(自衛隊) 3位
51kg級 堀内優(日大) 棄権
55kg級 松川知華子(ジャパンビバレッジ) 優勝
59kg級 伊藤友莉香(環太平洋大) 優勝
63kg級 西牧未央(中京女大) 優勝
67kg級 井上佳子(中京女大) 3位
72kg級 佐野明日香(自衛隊) 2位


 金メダルは計3つ。女子55s級の松川は全試合フォール勝ちで圧勝。吉田の背中を追って精進してきた結果が出た。女子63s級の西牧には世界女王の貫録が見えた。女子59s級の伊藤が劇的なシニア・デビューを果たしたことは日本にとって大きな収穫だろう。

 金メダルには届かなかったが、五輪階級の女子48s級では坂本が銅メダル、72s級では佐野が銀メダルを獲得し、“五輪戦士”不在でも日本の強さを”世界”に見せ付けた。特に佐野は柔道から転向してわずか2年でアジア2位へ。以前は柔道選手ならではの組み技や足技を武器にしていたが、今大会では果敢にタックルで攻めてポイントを奪うなど完全にスタイルが変わっていた。

 すべてが順調だったわけではなく、若手の目玉選手だった女子51s級の堀内が右肩脱きゅうで棄権したため、金メダル3つを獲得しても国別対抗得点で中国に追いつけず、2年連続団体優勝は飾れなかった。それであっても、”若手”で結果を残したアジア選手権は2012年ロンドン五輪へ向けて幸先のいいスタートを切ったと言えそうだ。


■栄和人強化委員長の話

 「全体的に見て、48s級と51s級に五輪選手が出ていたくらいのレベルだった。そういう中で日本選手がどのような闘いをするかが楽しみだった。48s級の坂本は伊調千春を北京五輪で苦しめた黎笑媚(リ・シアオメイ=中国)に接戦で負けたことが、次の大会につながる試合になったと思う。この大会で坂本が一番精神的に成長した。以前は試合で負けると泣き崩れたが、今回はそういうことがなかった。試合に負けても前向きだった坂本の姿を見れたことがうれしかった。

 55s級の松川は思い切った技を展開して、全試合、大差で勝ったことが評価される。これから期待したい。59s級の伊藤は新人で初めてのシニア大会でありながら、積極的に攻めて相手を圧倒した。初代表で試合を優勝で飾ったことは大きな収穫だ。

 63s級は世界女王の西牧が圧倒的な強さを見せて優勝した。今年の世界選手権(デンマーク)では優勝を義務づけられている選手なので、金メダルを期待したい。67s級の井上は、強い選手と闘っても、相手が弱くても、レスリング・スタイルが相手のペースになってしまうことが残念だった。だが、世界選手権で強い相手との接戦をものにしてメダルを取れる選手であることは間違いないので、勝つレスリングをしてほしい。
 
 72s級の佐野はレスリングを始めて間もない選手。重量級にもかかわらず、動じず、積極的な攻撃をしていた。結果的に2位ではあるが、国際経験を積んで、世界大会に向けてメダルを期待できると思う。

 国別対抗戦では団体2位だった。若手中心で臨んだ大会でこの成績はとてもよかったと思う」

(取材=増渕由気子)


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