【特集】目標は2016年の東京オリンピックの代表!…JOC杯女子カデット52kg級優勝の田中亜里沙(埼玉栄高)【2009年4月26日】



 JOC杯ジュニアオリンピック大会1日目が4月25日、神奈川・横浜文化体育館で行われ、女子カデット52kg級は田中亜里沙(埼玉・埼玉栄=右写真)が初優勝した。

 3月のクリッパン女子国際大会(スウェーデン)カデット52kg級で優勝し、4月の全日本女子選手権でも2連覇を達成した。その勢いで臨んだJOC杯で、田中は終始フォールを狙う余裕があるほど。決勝戦では理想的なフォール勝ちで、大会初優勝に花を添えた。それでも「もっとフォールを狙えた」と田中は反省点をすぐ洗い出した。これで、今年の目標だった「全日本女子選手権」、「JOC杯」、「全国高校女子選手権」の“三冠達成”に王手をかけた。

■2年生高校三冠王者の兄の背中を追う

 “田中“そして”三冠王”――。このフレーズを聞くと、2007年に2年生ながら高校三冠王に輝いた田中幸太郎(当時京都八幡)を思い出す人も多いのではないか。実は、田中は高校三冠王の肩書を引っさげて今年、早大に入学した田中幸太郎の実の妹だ。

 田中は兄の影響でレスリングを始めた。幼少からエリートだった幸太郎の背中を常に見ており、「兄を尊敬しています。兄みたいな人になりたいです」。2つ年上の兄貴を選手として、そして人生の先輩として“お手本”にしている。

 「強くなりたければ女子がいる環境がいい」との地元のコーチの勧めで、高校進学の視野を全国に広めた。今まで男の子に混ざって強くなってきたため、「女子高よりも、男女共学でレスリングが強い高校」という条件がそろった埼玉栄への入学を決めた。

 わずか15歳で親元を離れることになったが、甘えが出る時は常に兄のことを思い出す。「そういえば、お兄ちゃんは、部活で疲れて帰ってきても、ちゃんと勉強していたな」。勉強も部活動も手を抜かなかった幸太郎の姿は田中の目に焼き付いている。寮生活で自分に厳しくしてきたことで、成績もだいぶ兄に近付いてきた(左写真=JOC杯で闘う田中)

 だが、いいことばかりを兄に教わったのではない。2年連続三冠王を狙った幸太郎のラストシーズンは、けがに泣き、まさかの無冠に。「けがをしたら勝てない」ということも兄の背中から教わった。2009年に入ってまだ無敗の田中だが、けがをしないことも今後の課題の一つだ。

■最終ゴールは2016年東京五輪出場!

 現在16歳の田中の最大のモチベーションは、2016年のオリンピックだ。2016年に田中は24歳になる。競技レベルのピークを迎えるであろう時期に、東京都が五輪に立候補している。

 「東京だったら、最高の環境で試合ができる」と田中は五輪招致に大賛成だ。冬のスウェーデン遠征では食べ物や環境の違いに少々手こずり、異国での調整の難しさを痛感した。それだけに「東京でオリンピックをやってほしい」と切望する(右写真=埼玉栄・野口篤史監督と田中)

 当面、シニア転向後は51kg級で頂点を目指す予定だが、「51kg級は五輪にはないので…」と、機が熟せば、48kg級か55kg級への階級変更をにおわせた。「力よりも技術勝負で綺麗で静かなレスリングがしたい」と話す田中。兄と同じく“高校三冠王”に輝くことはできるだろうか。

(文・撮影=増渕由気子)


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