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【特集】松川、2度目のアジア女王に輝く!「次は日本一になりたい」【2009年5月3日】

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 アジア選手権(タイ・パタヤ)第2日が5月3日、当地のアンバサダ・シティホテル・パタヤで行われ、女子55s級・松川知華子(ジャパンビバレッジ)が3試合を勝ち抜いて、3年ぶり2度目の優勝を飾った。

 「本当は(吉田)沙保里(ALSOK綜合警備保障)さんが出る大会でしたが、チャンスを与えてもらったからには、結果を残したかったです」と2番手での出場も、目標は明確。2006年のアジア選手権、ゴールデングランプリの優勝に続いて、与えられたチャンスを確実にものにした。

 55s級――。アテネ五輪選考で、世界チャンピオン同士の吉田沙保里と世界V4・山本聖子が火花を散らしてから、日本にとってこの階級は”聖域”。55s級の日本代表は常に”世界の頂点”を望まれている。それだけに、松川へのプレッシャーは大きかった。

 試合前は「すごく緊張した」というが、内容はパーフェクト。決勝戦の中国戦の序盤で、見合ってしまったが、中盤から相手の腕を離さず、テークダウン、第2ピリオドもグラウンドに持ち込んで一気にフォールした。レフェリーがマットをたたくと、2度拍手して満面の笑み。「本当にうれしい。試合前は硬くなってしまったが、監督、コーチ、選手など周りの人に助けられて、リラックスできました」と周囲に感謝した。

 全試合、無失点でフォール勝ち。1アクションでテークダウンを奪うと、そこから多彩な技で相手を翻弄した。「試合で舞い上がると、いつもタックルだけのワンパターンな攻めが多かったけど、今回はいろいろな技を出せた。もしかしたら、今までで一番技を出せたかも」。吉田の背中を追い続けてきた効果が出てきた。

「吉田だけが強くてもダメ」といつも口にしてきた栄和人女子強化委員長も、松川の素晴らしい試合ぶりに目を細めた。松川が圧倒的な強さを見せたのだから「五輪選手以外も日本は強い」ことが証明されて、満足そうだった。


高校時代から55s級一筋というプライド

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   五輪直前になると、五輪階級のエントリーが増え、それ以外では”世界選手権に出るため”に、強豪選手を避けて、階級変更をすることがしばしばある。世界V4の正田絢子(網野高教)は、63kg級で北京五輪を目指すために、一度59s級に落として世界選手権に出場。世界の経験を積んだ。

 絶対女王・吉田がいるからこそ、松川の心境はどうなのだろうか。「ずっと55s級でやってきたから、落とす、上げるという感覚が分からないし、階級変更を迷ったこともない」と話し、この階級がベストということを強調した。

   また、五輪直前に55s級に変更してくる選手に対しても、「絶対に負けません。55s級のプライドはあります」とキッパリ。事実、51s級世界女王で北京五輪の55s級出場を目指した坂本日登美(自衛隊)に、松川は2007年のクイーンズカップで完勝している。


”日本一”という目標がモチベーション

 吉田との対戦はほとんどがフォール負けで、「練習でもなかなかポイントが取れない」と壁の大きさは痛感している。でも、”日本一”という目標があるこそ、くじけずにがんばれるそうだ。「練習がきついとき、妥協しそうなときに思い出します。『勝つためにやってるんだから』と」。

 第1日の男子グレコローマン55s級・長谷川恒平(福一漁業)に続いて、2日連続で場内に響き渡った”君が代”。セレモニー後は、福田富昭会長をはじめ、たくさんの関係者に「おめでとう」と声をかけられた。「やっぱりいいですね。日本でもそうなりたいし、国際大会も日本の1番手として出たいです」と打倒・吉田へのモチベーションがあがってきた。

 大会第3日は、女子5階級が行われる。松川の金メダルが、日本のメダルラッシュに火をつける!

  (文・撮影=増渕由気子)