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欧州選手権でアゼルバイジャンが国籍規定違反…FILAは見て見ぬふり?【2010年4月22日】


 4月13〜18日にアゼルバイジャン・バクーで行われた欧州選手権で、アゼルバイジャン代表として出場した女子3選手が、国際レスリング連盟(FILA)の国籍規定に違反していることが分かった。また、ロシアは男子フリースタイルで国籍規定違反の選手がいると同国協会ホームページ上で指摘し、FILAに抗議したとしているが、4月21日現在、いずれもFILAデータベース上の記録として残っている。FILAの国籍規定がなし崩しになる可能性が出てきた。

 最も顕著に違反しているのは、女子51kg級のアンゲラ・ドロガン。昨年8月の世界ジュニア選手権まではモルドバの選手として出場していたが、今年3月のワールドカップ(W杯=中国・南京)にアゼルバイジャンの選手として参加。欧州選手権でもアゼルバイジャンの選手として出場し14位となっている。

 55kg級のカテリナ・ドムブロフスカも2008年8月の世界ジュニア選手権までウクライナの選手として出場したあと、今年3月のW杯からアゼルバイジャンへ。欧州選手権では7位に入賞している。48kg級のマルジゲット・バゴメドバは2008年6月の欧州カデット選手権まではロシアの選手として出場。今年のW杯からアゼルバイジャンの選手として闘っている。

 FILAの国籍規定では、国籍を変えた場合は2年間、新しい国で出場できないことになっている。後者2人の場合は「足かけ2年」と拡大解釈できるものの、アンゲラ・ドロガンの場合は1年も経たないうちに新しい国から出場し、それが認められたことになる。

 中国でのW杯の時に日本の審判員がその事実を指摘したが、「(W杯は)フェスティバルだ」として不問にされたという。しかし欧州選手権でもこうした国籍規定違反がまかり通ったことは、2012年ロンドン五輪へ向けて、国籍の移動がやりたい放題になる可能性が出てきたといえよう。

 ロシアは男子フリースタイル55kg級で優勝したマクマド・マゴメドフ(アゼルバイジャン)が国籍規定違反であると指摘している。同選手は2006年までロシアの選手として闘っており、同年欧州ジュニア選手権はロシア選手として出場している。その後、大陸選手権等の出場はないものの、2009年1月の「ヤリギン国際大会」ではロシアの選手として出場して3位に入賞。同年のワールドカップにも、出場こそしていないがロシア選手としてエントリーしていたという。昨年7月のゴールデンGP決勝大会からアゼルバイジャンの国籍に変わった。

 FILAは昨年の世界選手権で、2008年北京五輪にカザフスタン選手として出場しながら、ロシアの選手として出場した女子59kg級のオルガ・キオソバ(旧姓スミルノバ)を、発覚後に順位はく奪の処分を行っている。しかし今回はおとがめなしとなるもよう。

 FILAはアゼルバイジャンに大スポンサーを持っており、アゼルバイジャンに対して強くものを言えない弱みを抱えていると言われている。収益の見返りに、規定違反を見て見ぬふりしているのか? 世界各国からの厳しい姿勢が必要と思われる。


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