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【世界選手権代表決定選手】男子グレコローマン66kg級・藤村義(自衛隊)【2010年5月2日】

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)
 

 男子グレコローマン66s級は藤村義(自衛隊)が決勝、プレーオフともに全日本チャンピオンの清水博之(自衛隊)を下し、2年連続で世界選手権出場のキップを手に入れた(右写真:プレーオフで闘う藤村=青)

 昨年12月の全日本選手権では、藤村に勝利しての初優勝を飾った清水は、この大会でも全日本王者の意地を見せ、相手に1ポイントも奪われることなく決勝に進出。一方の藤村も無失点で決勝に勝ち上がってきた。2人が決勝で戦うことになるのは、必然だったのかもしれない。

 だが、意地の部分で上回っていたのは藤村だったと言える。全日本選手権の決勝黒星を「調整ミス」と分析し、今年に入ってから気持ちを切り替えた。体調も上がり、3月のハンガリー・カップ優勝を手土産にこの大会には万全の状態で臨んできた。

 頭の中にあったのは、清水へのリベンジと世界選手権出場のみ。さすがに手の内を知り尽くしていて、両者ともポイントをなかなか奪えない中、藤村が清水を完封して無失点(1-0,3-0)でまずは今大会の優勝を決めた。

 そしてプレーオフ。決勝同様、第1ピリオドでグラウンドでの攻防を守り切ってこのピリオドを制した藤村は、第2ピリオドにはローリングを決めてピリオドスコア2−0で制し、世界行きを決めた。

 「矛盾しているかもしれないのですが、堅実に守りながらも、大技を狙った試合をしたい」という藤村。意地の部分で上回っていたというのは、同門で2大会連続決勝を争った清水の存在だ。「清水とは同門でお互い手の内も分かっています。年齢は自分が4歳上ですが、自衛隊体育学校の同期なんです。だから、どうしても彼に負けたくないという気持ちは強い」。

 同階級で同門の対決。レスリングの公式戦では珍しい光景でもなんでもないが、技術だけでなく、“意地”が勝敗を左右することもある。そんなことを感じさせてくれた試合だった。


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