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【世界選手権代表決定選手】女子59kg級・正田絢子(京都・網野高教)【2010年5月2日】

(文=保高幸子、撮影=矢吹建夫)
 

 4度世界一になっている正田絢子(京都・網野高教)が、初戦(2回戦)で黒星という不覚を喫しながら、プレーオフに勝って世界選手権出場を決めた(注・5月3日の日本協会理事会にて代表決定は保留へ)

 まだ午前のうちに会場に緊張感が走った。正田が敗れた。相手は上位争いに食い込んでくるとは予想されなかったダークホース、島田佳代子(自衛隊)だ。「減量がなくて、足も体も動いていて…。それが裏目に出ました」。油断をもたらしたのか、島田にストレート負け。「相手の動きを見てしまって、自分のレスリングができませんでした」

 プレーオフまでの4時間、試合は見ずに過ごした。自分は何のためにレスリングをやっているのか、と自問自答していたという。出た答えは「世界で勝つため」。気持ちを切り替えるのは楽ではなかったが、網野高の後輩となる51kg級の堀内優(日大)の決勝を見届けてから動き出した。「堀内が辛かった時を見ていたので、自分も頑張らなきゃと思いました」

 島田は決勝で昨年の世界選手権代表の山名慧(アイシン・エィ・ダブリュ)を下しての初優勝し、これ以上ない昇り調子。それでもプレーオフでは正田が本来の動きを取り戻し、第1ピリオドは1−0ながら、第2ピリオドは小手の投げ合いからあわやフォールというところまで持ち込み、快勝で勝利をおさめた
(左写真=プレーオフで闘う正田)

 まさかの初戦敗退から這い上がっての、代表権獲得。試合後の目には涙が浮かんでいた。

 世界選手権は、2008年北京五輪の後に行われた東京大会以来2年ぶりの出場となる。試合直後のインタビューでは「最終的にキップを手にできてほっとしてます。世界選手権で優勝(を目指す)と言いたいところですが…。体をつくり直して、ひとつひとつやっていきたい」と控え気味。

 その後、教員生活との両立によって得た環境をプラスに、レスラーとして、教員として、「生徒の見本になれるように、一生懸命やりたい」と少しはにかんで語った。5度目の世界一へ、新しい正田絢子が動き出した。


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