▲一覧ページへ戻る

【世界選手権代表決定選手】男子グレコローマン60kg級・松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)【2010年5月3日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)
 

 昨年の全日本選手権優勝者、松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)が連覇を達成。世界選手権代表の座を手に入れた(右写真=決勝で闘う松本)。だが、このクラスの第一人者として求めているレベルが高いのだろう、「決勝ではポイントを先に取られて、ふがいない試合になってしまった。世界選手権ではもっと攻めていきたい」と、試合後は真っ先に反省を口にした。

 準決勝まで危なげなく勝ち上がった松本は、決勝で倉本と対戦した。第1ピリオド、先制したのは準決勝で五輪3度出場の笹本睦(ALSOK綜合警備保障)を下して勢いに乗る倉本だった。不利な体勢をはね返して3点をゲット。松本は0−3とリードされ、残された時間はわずか10数秒だった。

 このピリオドをあきらめ、第2ピリオドからの巻き返しを狙うのか。そんな空気が漂ったが、世界の上位を目指す選手は違った。終了間際に見事な投げを決めて逆転すると、第2ピリオドは第1ピリオドとは別人のように生き生きとしたパフォーマンス。投げ技とグラウンド技を次々に繰り出し、あっという間に8ポイントを上げてみせた。

 決勝の直前、マットでは男子フリースタイル84s級の決勝があり、弟の篤史(ALSOK綜合警備保障)が初優勝。「いい刺激になった。湯元さん兄弟(進一、健一)も同時優勝はないと思うので、うちが先になってうれしい。両親にも恩返しができたと思う」。試合内容の反省とは打って変わり、兄弟アベック優勝には顔をほころばせた。

 昨年は笹本の壁を乗り越え、世界選手権に初出場して8位入賞。世界トップ選手との試合を通じて貴重な体験を積んだ。「世界のトップは強かったし、何よりグラウンドの技術が高かった。でも、スタンドでは攻めも守りも渡り合えたと思うし、その後のアメリカ遠征でもスタンドの力は実感できた。いいところを伸ばして、今年は満足するような結果を残したい」。

 2度目の世界選手権は本気で表彰台を狙う。
 準決勝で敗退した笹本は「今大会で優勝して、プレーオフも勝って世界選手権に出場するつもり」と意気込んでの出場ながら、倉本の前に本来の力を出し切れず、ポイントを奪えない完封負け。試合後は「完全に負けました」とサバサバした口調で語った。
 かつて圧倒的な強さを見せたグレコローマンのエースも32歳になった。昨年の全日本選手権に続く敗退という事実に、年齢による衰えを指摘する声も上がるだろう。笹本自身、厳しい現実は認識している。「他のスポーツでは、自分と同じ年齢で活躍している選手がたくさんいる。自分にはまだまだ甘いところがあった。これからは学生と同じ練習メニューをこなして追い込んでいきたい」。初心に返り、再浮上を目指す。


  ▲一覧ページへ戻る