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【世界選手権代表決定選手】男子フリースタイル96kg級・磯川孝生(徳山大職)【2010年5月3日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)
 

 磯川孝生(徳山大職)が男子フリースタイル96kg級で3連覇を達成。全日本選手権に続く優勝で、自身2度目の世界選手権出場を決めた。

 第一人者らしい堂々たる優勝だった。決勝で対戦したのは、昨年のアジア選手権代表の下屋敷圭貴(NEWS DERII)。開始早々からアグレッシブにプレッシャーをかけた磯川は、着実にポイントを重ねて下屋敷に反撃を許す暇を与えない。 結局、1ポイントの失点で難なく優勝。「アジア選手権(5月12日開幕、インド)にピークが来るように調整してきた。今大会で弾みがついたと思う」と安堵の表情を浮かべた
(左写真=決勝で闘う磯川孝生)

 充実した試合内容は、今大会への熱い意気込みが生み出したに違いない。昨年の全日本選手権では優勝したものの、その内容には大いに不満を残したという。「自分からポイントを奪うことができず、相手が出てきたところを返すようなポイントが多かった」。その反省が、今大会の攻撃的なレスリングにつながった。

 昨年、初めて出場した世界選手権の苦い記憶も、トレーニングに打ち込む気持ちの原動力となった。「各国の1位しか出られない大会だし、初めてだったので空気にのまれた」。プレッシャーに打ち勝てず、残ったのは悔しさだけ。今年は何としても地に足をつけ、世界選手権でいい結果を出したい。その気持ちが今大会のパフォーマンスに結びついた。

 磯川は現在、徳山大の職員として総務課で朝から夕方まで働き、レスリング部の学生を指導し、自らもトレーニングするという忙しい生活を送っている。「無駄のないような練習を考えるし、学生に教えることによって、自分の勉強にもなっている」。与えられた環境が工夫を生み、ひいては精神面の強化にも一役買っているのだろう。

 「技術も体力もしっかりつけて、海外で勝負したい。まずはアジア選手権で結果を出したい」。徳山で練習を積む磯川の目は、しっかりと海の向こうの世界を見据えている。


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