▲一覧ページへ戻る

【世界選手権代表決定選手】女子55kg級・吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)【2010年5月4日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)
 

 世界のトップを走り続ける女子55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)が、圧倒的な強さを見せて優勝した。9月の世界選手権では、五輪も含めた世界大会10連覇の偉業に挑むことになった(左写真=決勝で闘う吉田)

 今大会、男女を通じて五輪メダリストたちが負けたり、苦戦を強いられたりする中、女子63kg級の伊調馨とともに、吉田もまったく隙を見せずに優勝した。このアスリートを支えているのは、何よりも勝利への強い意欲だろう。

 決勝の相手は、このところ恒例となっている松川知華子(ジャパンビバレッジ)。松川も年々レベルアップしているのだから、少しくらい差が詰まってもよさそうなものだが、それを断じて許さないのが吉田だ。この日のレスリングには一段とすごみがあった。挑戦者の松川でさえ、びっくりしたのではないだろうか。次々にタックルを決め、グラウンドでコントロールし、2ピリオドともテクニカルフォールで試合を終わらせた。

 昨年12月の全日本選手権では手首を故障しながらも、当たり前のように優勝した。今大会でも、手首の状態は決して万全ではなかった。そんな状況でありながら「手首を使わず攻めるレスリングができた」と言うのだから驚くばかり。課題は「フォールを狙いにいったときの極めが甘かった」という。

 いつも当然のように優勝してしまう吉田だが、トップを走り続けるものにしか分からない苦労もある。モチベーションの維持はその一つに違いない。そんな吉田にとってうれしいニュースがあった。かつてしのぎを削ったこともある坂本日登美(自衛隊)が今大会で復帰したのだ。

 「日登美先輩が48s級で復帰して、力強い姿を見せてくれた。元気づけられました。昔みたいに一緒に練習して、世界選手権では一緒にメダルを取りたいと思います」。同じ目標に向かい、すべてを犠牲にして努力するレスラーの存在は、何よりの励みになるのだろう。

 肉体的にも、精神的にも強さを増している吉田。世界選手権も大いに期待できそうだ。


  ▲一覧ページへ戻る