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【特集】現役世界王者に勝ってアジアチャンピオン! 大きな自信つかんだ湯元進一(自衛隊)【2010年5月14日】


 【ニューデリー(インド)、増渕由気子】  アジア選手権男子フリースタイル55s級は、湯元進一(自衛隊)が“日本のお家芸”の名のとおりに大活躍。2回戦では元世界ジュニア王者のハサイン・ラヒミ(イラン)、準決勝では現役世界王者のヤン・キョンイル(北朝鮮)を破っての優勝。価値あるアジア王者の座に就いた。

 湯元も、5月のゴールデンウィークに行われた全日本選抜選手権に出場。優勝したものの、プレーオフに稲葉泰弘(警視庁)に敗れて世界の切符は獲得ならず。「正直、気持ちの面で上がらない部分があった」状態でインドにやってきた。「だけど、ここで悪い結果でもいいことはない」と、その悔しさをマットの上でぶつけることにした。
(右写真=表彰式で笑顔の湯元=左から2番目)

 今大会、湯元がメンタル、フィジカル面ともに不完全で優勝を手にしたのは、“海外研究”の結果が大きい。「決勝戦の相手以外は、全員知っていました」と湯元は、普段からJISSのライブラリ施設を利用して、研究を行っていた。「左右どちらの構えなのか、間合いは遠いのか組み付いてくるタイプなのか、それが分かるだけでも、試合の組み立てにすごく役立つ」。連戦のため、体があまり動かなかったが、試合の組み立てでカバーした。

 大会のハイライトは、2回戦のイラン戦だろう。第2ピリオドのクリンチで、湯元は、クラッチが十分に組めていないと、2回連続でアテンションを受け、ワンポイントコーションで、試合終了になりかける。チャレンジをするが、最初は拒否された。それに真っ向から対抗したのが、佐藤満総監督だった。審判にかけよって、2度目のアテンションは構えが低すぎるイランだと主張した。5分後、その主張が認められて、クリンチはやり直しに。
(左写真=審判団に抗議する日本チーム。手前の青が湯元)

 「(連続アテンションには)納得してないけど、勝負を諦めかけました。佐藤総監督、井上監督(の行動)に救われた」と湯元。開き直って挑んだ第3ピリオドは、終盤に湯元が場外ポイントを奪って勝負を決めた。

 このピンチを乗り切ると、一気に優勝への追い風が湯元に吹く。キョンイルは、2回戦でカザフスタンと泥仕合をやり、その影響からか、準決勝のスタートダッシュに失敗。キョンイルの立ち上がりのもたつきを、湯元は見逃さず、第1ピリオドをクリンチでものにすると、第2ピリオドは2−1で奪ってストレートで撃破した。    

 世界王者を倒した湯元は、落ち着いており、ガッツポーズもなかった。「昨年12月に高校生に負けた。悔しいというより、プロとして恥ずかしかった。それからは、もう、誰が相手だろとうと、肩書きに意識することを辞めました」。全日本選抜の準決勝で北京五輪銀の松永共広(ALSOK綜合警備保障)に勝ったときも、「嬉しいという気持ちはなかった」という。12月の躓きが、湯元を大きく成長するきっかけになったようだ。
(右写真=世界王者と戦う湯元=赤)

 「次の目標は、12月の全日本選手権。これに勝たないとオリンピックへの道がなくなってしまうので」。1ヶ月に2度のリミット計量という強行日程の中、両大会ともに優勝した湯元。過酷な遠征を乗り切った湯元が、大きな自信をつかんだことは間違いない。


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