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【特集】若松正監督が就任! 陸上部、野球部に続けるか、東洋大…東日本学生リーグ戦展望(3)【2010年5月日】

(文・撮影=増渕由気子)
 
  《一部リーグ組み分け》
 【A組】拓大、日体大、国士舘大、
東洋大、専大、神奈川大、青山学院大、法大
 【B組】早大、山梨学院大、日大、中大、大東大、明大、群馬大、東農大

 正月の風物詩・箱根駅伝で2年連続Vを達成した東洋大。野球部も実力の東都と銘打たれている東都大学リーグの一部に在籍。近年では、ソフトバンクホークスの大場翔太選手を輩出するなど、強豪チームの一角であり、ともに東洋大の看板部だ。

 それに続くブレークを目指すのがレスリング部だ。レスリング部も長い歴史があり、世界V4の正田絢子(現京都・網野高教)がOGにいる。だが男子に限っては、「弱くはないけど、強くもない…」が現状。東日本学生リーグ戦の優勝はなく、昨年のリーグ戦はBグループ4勝3敗に終わって4位。その前年もAグループ4位。全日本学生選手権の王者は1991年以降、18年間出ていない。

■東洋大最後(?)の学生王者、若松正氏が監督へ

 こんな現状を打破すべく、今年から“新生・東洋大”がスタートする。その指揮を執るのが若松正・新監督だ
(右写真)。大学時代に2年と4年で全日本学生選手権フリースタイル48s級で優勝した実力者(4年生の時は学生二冠王)。昨年まではコーチとして主にスカウトを担当していた。

 「残念ながら、私が王者になって以降、東洋大からは学生チャンピオンが出ていません。大学王者なら何人かいますが、各大学から複数名出場できるインカレで優勝するというのは、はやり価値が違いますよね」。学生最高峰のトーナメントを勝ちぬいた実績をもって学生たちに意識改革の徹底を計る。

 若松監督の学生時代は“強い東洋”の時代だった。「私が入学したときは、今で言うグループ2位でした」。東日本の4本の指に入っており、リーグ戦優勝も視野に入れられる時代だった。

 時は過ぎ、拓大、山梨学院、早大などが力をつけ始めると、その地位は下降。OBとして一抹の寂しさを覚えた。「OBとして寂しかったです。なんとか強化したいと思いましたよ」。若松監督は早大・太田拓弥コーチ、神奈川大・吉本収監督と同期。早大はいまや優勝候補の最右翼に成長した。「同期ですし、いい刺激になる」と腕鳴るようだ
(左写真:現役時代の若松監督=学生二冠王者に輝いた1991年全日本大学選手権)

■3年生の若林健太(55kg級)がエースとして自覚を持てるか

 昨年、全日本大学王座決定戦で3位になった東洋大。昨年のレギュラー・メンバーである若林健太(55kg級)、牧瀬裕樹、入江和久(60kg級)、脇田康平(74s級)、藤川裕貴(96s級=主将)、牧瀬竜二(120s級)が今季も在籍。恵まれた練習環境を見ると、十分に上にいける素質がある。

■東洋大の予想されるメンバー
(数字は学年、右端は出身高)
55kg級 若林健太 大分・日本文理大付
60kg級 牧瀬裕樹 埼玉・埼玉栄
66kg級 入江和久 茨城・霞ヶ浦
74kg級 脇田康平 福岡・三井
84kg級 斉藤啓史 茨城・霞ヶ浦
96kg級 藤川裕貴 富山・高岡商
120kg級 牧瀬竜二 埼玉・埼玉栄

 だが、それで勝ち切れない理由を若松監督はこう指摘する。「選手に足りないところは、自分から進んでやること。私は、東洋大でこのスタイルで強くなったので、学生たちにわかってもらいたいです。あとは、元気がまだ強豪チームに比べると足りない。『勝つぞ』という気合がね」。昨年の主力が5名も残っており、自主性を持ったチームへ変革できるかがポイントとなる。

 若松監督がリーグ戦で一番重要視するのが「流れ」だ。その一番の適任者が、55s級の若林健太だ。2008年JOC杯ジュニアオリンピック2位、昨年秋の新人戦で3位という実績だけではなく、その柔らかくセンスあるレスリングを武器に“大物食い”ができる器だ。若松監督も「今年のチームは若林のスタートにかかっている」とキッパリ。

 だが、その若林には壁がある。「強い選手に勝ったり、あるいはすごく競った試合をするんだけど、完勝しなければならない相手にも、フルピリオドまでもつれてしまうんです」。その欠点を若林が克服できるかが東洋大浮上のカギになるだろう。

■「強くさせて、勝つ喜びを教えてあげたい」…若松正・新監督

 層が厚い階級は牧瀬、入江の2人がレギュラーを争う60kg級。牧瀬はグレコローマンで全日本学生選手権、全日本大学グレコローマン選手権ともに準優勝
(左写真:昨年の全日本大学グレコローマン選手権で闘う牧瀬=青)。入江は昨年の全日本大学選手権3位の実績。若林に続いて60s級を取れれば、どの大学にも勝負を仕掛ける準備が整う。

 66s級は、茨城・霞ヶ浦高出身の田所孝之をエントリーしている。場合によっては「60s級のどちらかをUPさせるかも」と若松監督。駒のある軽量級は監督のさい配にも注目したい。

 藤川主将を96s級に、120s級には牧瀬の弟・牧瀬竜二とルーキーの坂元将悟を起用する。坂元は若林と同じ大分・日本文理大付高出身。「身体能力が抜群で、120s級なのにバック中もできる」と監督もほれた逸材だ。体力、パワーの差が高校レベルよりグンと上がる重量級だが、「私は1年生の時から試合に出させてもらって強くなった。坂元にも、ルーキーイヤーから試合で経験を積んでもらいたい」と主力として起用する腹積もりだ。

 どんな大会でも2位、3位とタイトルにあと一歩の選手が多い東洋大。裏を返せば、強化方針を変えるだけで大化けする可能性が十分にある。「強くさせて、勝つ喜びを教えてあげたい」と若松監督もやる気は十分。就任2ヶ月で迎える今回のリーグ戦は「通過点」。初日の専大、神奈川大戦の初陣をいかに飾るかが注目だ。


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