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【特集】JWAの最高の指導力が実る! レスリング歴2年と2ヶ月で全中チャンピオンに【2010年6月14日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

 

 日本オリンピック委員会(JOC)の支援の下で中高一貫でエリート教育を行っているJOCアカデミー。全国中学生選手権大会でも、男子66s級の白井勝太、女子58s級の花田彩乃、同64s級の古市雅子(いずれも、所属は東京・稲付)の3人が優勝した(右写真=上から白井、古市、花田)

 JWAは勝つためのエリート集団。ナショナルチームと同じような環境での練習が積めるため、「勝って当たり前」と言わることもしばしば。吉村祥子コーチは「実は、相当なプレッシャーなんです」と選手を労わる。

 だが、忘れてはならないのは、JWAにはレスリング歴が長くて強い選手だけが在籍しているわけではない。今大会、女子でチャンピオンになったJWAの第1期生、花田と古市はどちらも柔道からの転向者で、レスリング歴は2年2ヶ月。吉村コーチが「(4月のJOC杯ジュニアオリンピックで優勝した)村田夏南子のように、柔道の全中チャンピオンのような実績がある選手ではありません」と話すように、他のクラブのエリートたちに比べたら、経験や試合運びなどにハンディがある選手だった。

 花田はメンタル面、古市は身体能力を買われて、それぞれJWAの一期生に抜てきされたが、指導する側からすると、苦労の面も垣間見える。白井や宮原のようにレスリングのエリートもいれば、一方でルールから教えなければならない。外部からは、全員が「エリート集団のJWA」と見られ、常に勝つことが要求される。昨年の大会は2人とも優勝できなかった。「なんとかして勝たせなければ」。スタッフ陣たちの、プレッシャーも計り知れない。

 3年目の正直で挑んだ今大会。吉村コーチは「花田には特に厳しいトーナメントだった」と振り返る。2回戦では、4月のジュニアクイーンズカップ・カデット57s級優勝の香山芳美(神奈川・久木)と激突。これが大きなヤマだった。第1ピリオドは0−1で落とすが、第2ピリオドで逆転フォール勝ち。決勝戦も、第1ピリオドを落として、第2ピリオドも0−3と後がない状態から、投げ技で3−3とし、ビッグポイントの差で逆転した。

 その勝利に一番興奮していたのは、紛れもなくセコンドの吉村コーチだった。「2年と2ヶ月で全中チャンピオンって、すごいことですよ」と涙を光らせた。最高の環境、そして最高の指導陣を謳い文句にしているJWAが、今大会、その指導力を見せつけた格好だ。「これで第1期生は全員、中学のタイトルを取り、結果を出しました」と吉村コーチはホッとしていた
(左写真=JWAの選手たち)

 一方、男子は3人全員が決勝に進出したものの、白井のみが優勝。乙黒圭祐と澤太朗は決勝で敗れて2位だった。江藤正基コーチは、「最後は力尽きた感じ。反省して、鍛えなおします」と出直しを誓った。



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