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【特集】高知県の発展に取り組む元学生二冠王者…極東クラブ・小玉康二さん【2010年7月26日】

(文・撮影=樋口郁夫)
 


 かつてレスリングの後進県のひとつだった高知県。長い間、全国少年少女連盟への加盟がなかったが、2004年に高知クラブ(桜井優史代表)が加盟し、昨年、極東クラブ(小玉康二代表)が加盟。今年は両クラブで20選手が参加した。

 後発の極東クラブを率いる小玉代表
(右写真)は、国士舘大時代に学生二冠王者の経験があり1990年ころの国士舘大を支えた選手。1991年の全日本大学選手権は、当時無敵だった日体大を撃破して優勝に導いた。卒業して地元へ戻り、高校生の指導をスタート。有名なプロ格闘家にレスリングの指導をしたこともある。

 小玉代表は高知県のキッズ・レスリングを「選手数も増えてきて、少しずつ盛んになっています」と説明する。昨年のこの大会には、先発の高知クラブから近藤凛(女子3年28kg級)が優勝。今大会も4年36kg級の小林祐介が優勝。また今年4月のジュニアクイーンズカップでも優勝選手が出るなど、ようやく全国に通じるだけの実力を見せ始めている。小玉代表も続きたい気持ちは十分。今大会では女子5年生30kg級の小玉彩天奈が優勝し、銀2、銅1を取って意地を見せた。

 原動力は、やはり地元のレスリングを強くしたい思いだ。小玉代表は高知東高校の教師でレスリング部を率いるが、国士舘大で栄光を味わってきた人間だけに、指導者としてその思いを味わいたい気持ちは強い。

■キッズからの一貫強化で高知県レスリング界の発展を

 発展の第一歩は種をまくこと。中学時代までレスリング以外のスポーツをやっていた選手だけを集めて指導しても、追いつかない時代。キッズの普及に乗り出し、育て、高校レスリング界の発展につなげたいという。

 国士舘大で受けた練習をやらせているわけではないだろうが、「けっこう厳しくやっています」と言う。しかしクレームをつけてくる保護者はなく、「協力的で、やりやすいです」という
(左写真=1991年全日本学生選手権決勝で闘う小玉代表。相手は現在、プロレスリング・ノアで活躍中の秋山準)

 高校の監督だけに、インターハイ(8月2〜5日、沖縄・石垣島)を目前に控えて指導に力を注がねばならないのではないか? そこは他の指導者との連携ができている。この時期に県内の高校チームが合同練習しており、任せることができたからこそ、広島までやってくることができた。高知県をあげて一貫強化に取り組んでいる。

■メダルや優勝を経験させることが、やる気につながる

 選手には、全国大会だけではなく中四国地方で行われている大会を中心にできるだけ出場している。「メダルや優勝を経験させることが、やる気につながります。レスリングは年齢別、階級別なので、表彰状を手にしやすい」と、レスリングのメリットを説明する。

 地元新聞がその結果を報道してくれるので、高くはなかったレスリングの認知度もアップ。教員の間で頑張っていることが理解され、子供にレスリングをやらせてみたいという親が出てきているという。「選手が増え、高校、大学とレスリングを続け、地元に戻ってレスリングの発展に貢献できるようにしたいですね」と、地元愛を口にする
(右写真=セコンドで声援をおくる小玉代表)

 「全体を全国レベルにするには、まだ時間がかかると思いますが、何人かが全国一という段階には、あと3、4年でいけるのではと思います」。同じ四国の愛媛県は、かつてはレスリングの後進県だったが、現在では高校王者が次々と誕生するまでになっている。高知県にまかれたキッズの種が大きく育ち、全国を席巻する時代はいつか?



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