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【特集】世界選手権へかける(1)…男子フリースタイル96kg級・磯川孝生(徳山大職)【2010年7月31日】

(文=保高幸子)



 昨年12月の全日本選手権と今年5月の全日本選抜選手権を確実に勝ち上がり、2年連続での男子フリースタイル96kg級の世界選手権出場を決めた磯川孝生(徳山大職=左写真)。2012年ロンドン五輪を最終目標に見据え、2度目の“対世界”で自分のレスリングを確立しようとしている。

 磯川は「以前は点を取られるのが怖く、ディフェンス重視のレスリングだった」と、過去の自らのレスリングを分析する。昨年の世界選手権でも、反省点はそこだった。1回戦のディエゴ・ロドリゲス(ブラジル)には2−0(2-0,1-0)で快勝したものの、2回戦のジェイク・バーナー(米国)に対しては第1・2ピリオドともに0−1の黒星。

 「相手に合わせてしまい、後手、後手になりました。1ポイントもとれなかった」ポイント上はきん差だったが、内容からすると完敗と言えた。

■「先に攻めるのがベストの方法」…昨年の世界選手権の反省

 世界選手権で失敗したことで、コーチ陣の「先に攻めるのが隙を与えないためのベストの方法だ」という助言を信じることができるようになった。「攻撃は最大の防御である。相手より先に組む。先にワンアクション入れる。積極的に自分から」。同じ失敗を繰り返さないよう、世界選手権のあとは徹底して課題に挑んできた。

 全日本選手権や今年2月の米国遠征では間に合わなかった。ともに相手に合わせる消極的なくせが出てしまい、攻撃レスリングを実践できなかった。全日本選手権では辛うじて優勝したものの、デーブ・シュルツ国際大会では不戦勝のあと2連敗で、1点も取ることができなかった。

 しかし、磯川には秘めた熱い思いがある。「長年、この階級で世界と闘ってきた小平(清貴)コーチを尊敬しています。ですから、小平コーチに与えられた課題はこなさなければ、世界と闘えないというふうにひしひしと感じます。」

 全日本合宿では、2分3ピリオド攻め続けるための筋持久力をつける練習が多い。これらは特につらいが、「勝つために必死でがんばってきました」と磯川。コーチを信頼するからこそ。今、やらなければいけないと思う事は何かを尋ねると、「佐藤(満)強化委員長や小平コーチが組んだメニューをしっかりこなすことが一番」という答が返ってきた。

■課題に取り組んだ成果が出て、今年5月のアジア選手権で銅メダルを獲得!

 課題克服の成果は、5月の全日本選抜選手権とアジア選手権(インド)で表れた。どちらの大会も先制攻撃を仕掛け、積極的なレスリングを展開。「消極的」の汚名を返上し、重量級の意地を見せてアジア選手権3位という結果を残した。

 90kg前後の階級でアジア3位に入ったのは、1996年の川合達夫(90kg級)以来の快挙。磯川も「いい内容だった」と振り返り、結果のみならず内容ででも自信をつけたもようだ。

 昨年は、やっている練習の方向性が間違っていないことを確信できた。今は「去年の世界選手権の頃と比べて体力がついたことが自分でも分かります」という。磯川のレスリングは最終目標に向け進化している。

 2度目の世界選手権へ向け、「お世話になっている人に恥じることのないように、悔いのないように、最大のパフォーマンスを見せます」と意気込む。積極的に攻める日本重量級の意地を期待したい。


 磯川孝生(いそかわ・たかお)=徳山大職、2年連続2度目の出場
 1984年6月10日、熊本県生まれ、26歳。大分・日本文理大付高〜拓大卒。少年時代から全国に名をとどろかせていたが、中学では全国3位が最高。高校へ進んで再び頭角を表し、01年にはインターハイなどで優勝。02年には4大大会を制覇。さらにアジア・ジュニア選手権4位、全日本選手権3位と力をつけた。
 拓大2年の04年は全日本選手権84kg級で初優勝し、05年はアジア選手権2位など実力を伸ばした。しかし、06年全日本選手権は2位。07年から96kg級へ上げ、同年の全日本選手権2位。08年は北京五輪出場権獲得をかけてアジア選手権に出場しが、7位に終わった。
 09年に全日本選抜選手権で勝ち、世界選手権に初出場。同年の全日本選手権優勝を経て、今年のアジア選手権で銅メダルを獲得した。176cm。



◎磯川孝生の最近の国際大会成績

 《2010年》
 
【5月:アジア選手権(インド)】3位(14選手出場)
3決戦  ○[2−0(2-1,1-0)]Kushu Bekbolsun(キルギス)
敗復戦 ○[2−0(5-0,TF6-0)]Lo Tien-yu(台湾)
2回戦  ●[0−2(0-2,1-4)]Reza mohammad ali Yazdani(イラン)
1回戦  ○[2−1(1-0,0-1,1-0)]Nam Kwang Il(北朝鮮)

 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】=13選手出場
敗復戦 ●[0−2(0-2,0-2)]Eliot Kelly(米国)
2回戦  ●[0−2(0-1,0-3)]Pat Cummins(米国)
1回戦  ○[棄権]Korey Jarvis(カナダ)

 《2009年》
 【9月:世界選手権(デンマーク)】
14位(29選手出場)
2回戦 ●[0−2(0-1,0-1)]Jake Varner(米国)
1回戦 ○[2−0(2-0,1-0)]Diego Rodrigues(ブラジル)

 《2008年》
 
【3月:アジア選手権(韓国)】7位(10選手出場)
敗復戦 ●[0−2(TF0-6=1:03,TF0-7=0:47)]Shabanbay Daulet(カザフスタン)
2回戦  ●[0−2(0-3、TF0-7=1:12)]Kurbanov Kurban(ウズベキスタン)
1回戦  ○[2−1(4-1,1-5,@-1)]Burenbaatar Narantsetseg(モンゴル)

 《2007年》
 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会(米国)】(84kg級)=28選手出場
敗復戦 ●[1−2(5-2,2-3,1-3)]Bj Padden(米国)
2回戦  ●[0−2(0-1,0-6)]Travis Cross(カナダ)
1回戦  ○[2−0(3-0,6-0)]Sonu Patel(インド)



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