▲一覧ページへ戻る

 

【特集】世界選手権へかける(3)…男子フリースタイル84kg級・松本篤史(ALSOK)【2010年8月8日】

(文=増渕由気子)
 


 男子グレコローマン60s級の松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)と男子フリースタイル84s級の松本篤史(ALSOK=左写真)は、男子で史上初となる兄弟で同時世界選手権出場を決めた。弟の篤史は念願の初出場。世界選手権を控え、「緊張もあるけど、どれだけ通用するのか試したい」と腕を鳴らしている。

 松本は群馬・館林高時代の2005年にアジア・カデット選手権(茨城・大洗町)フリースタイル69kg級王者などに輝き、日体大へ進学して階級を84s級にアップしたことをきっかけにブレークした。2007年世界ジュニア選手権(中国)5位を経て、2008年に学生王者となり、同年の全日本選手権2位となるなど、重量級新世代のホープとして期待されてきた。

■松本に足りないもの−−それは“飛び道具”のタックル

 しかし、昨年のアジア選手権(タイ)は初戦敗退。海外公式戦のデビューはほろ苦いものになってしまった。その後、世界選手権代表も逃してしまい(代表は松本真也=警視庁)、スランプに陥った。「昨年は悔しい思いをしました。世界代表になれず、同期の前田(翔吾=現ニューギン)が代表入り。一緒に行きたかったです」と振り返る。

 だが、2009年アジア選手権とその後の全日本選抜選手権の黒星が、松本の意識を変えさせるキッカケとなった。これまでは、「不器用だから」と、差して前に出るスタイルを取っていたが、「それだけでは海外で勝てない」と気づいた
(右写真=ほろ苦いシニア日本代表デビューとなった2009年アジア選手権)

 今年4月からは社会人になり、空いた時間を活用して海外選手のビデオ研究を始めた。「オリンピックでは、84s級でもタックルでポイントを取り合っていました。自分もタックルがないと、世界では勝てないと思った」。

 全日本コーチ陣と松本の考えは一致している。コーチ陣からの注文は「技を積極的に展開すること」。自らタックルなどで切り込んでいく姿勢を松本に求めている。海外経験が豊富な小平清貴コーチ(警視庁)に重点的に指導を受けている松本は、それに応えるために、ふだんの練習から果敢にタックルを出して、自分のものにしようとしている。「世界選手権までには、精度を上げていきたい」と意気込む。

■DVDで外国選手を徹底研究! 世界で勝つ自覚が出てきた

 五輪代表選手のみならず、五輪メダリストを量産しているALSOKの一員となった松本は、はっきりと2012年ロンドン五輪出場を見据えている。日本代表という自覚も芽生え始めている。

 昨年、小幡邦彦が引退したことで、全日本2位ながらアジア選手権代表に選出された時は、「世界の勢力図は分からない。自分の力を出すだけ」と、海外選手の研究などは特に行わなかった。今回は大量のDVDを見ている。「できれば、ゴールデングランプリ決勝大会など、世界選手権を前に海外遠征をしたかった」ともらすほど、世界で勝つ準備に力を入れている(左写真=5月の全日本選抜選手権で、昨年の世界選手権代表を破った松本篤)。 

 先日、国際レスリング連盟からロンドン五輪の出場権獲得方法が発表された。来年の世界選手権で5位以内(該当者は6人)に入ると、出場権を手に入れられる。それを意識して、今年の世界選手権の目標は「5位以内」とキッパリ。

 「きついことをやっているし、今は『やってやろう』という気持ち」と前だけを向いている。スランプから一皮むけた松本篤史の世界デビューが期待される。


 松本篤史(まつもと・あつし)=ALSOK、初出場
 1988年3月24日、群馬県生まれ、22歳。千代田ジュニア教室出身。群馬・館林高卒。高校時代の2005年にJOC杯ジュニアオリンピック・カデットで優勝し、アジア・カデット選手権で優勝。
 日体大に進み、06年のJOC杯ジュニア選手権フリースタイル84kg級で優勝し、世界ジュニア選手権は5位入賞。08年は学生二冠(全日本学生選手権、全日本大学選手権)を制覇し、国体は3位。全日本選手権で2位に躍進。09年2月のデーブ・シュルツ国際大会(米国)では4位に入賞。
 09年はアジア選手権出場の機会を得たが初戦敗退。世界選手権代表も逃した。しかし全日本学生選手権で優勝。チーム事情で大会出場のブランクのあと、今年の全日本選抜選手権で優勝し、世界選手権代表決定プレーオフでも勝った。181cm。



◎松本篤史の国際大会成績

 
《2010年》
※なし

 
《2009年》
 
【5月:アジア選手権(タイ)】8位(11選手出場)
2回戦 ●[0−2(0-1,1-3)]KUMAR, Anuj(インド)
1回戦  BYE

 
【2月:デーブ・シュルツ国際大会】4位(16選手出場)
3決戦  ●[0−2(1-3,0-2)]Travis Pascoe(米国)
敗復4  ○[2−0(3-1,2-0)]Travis Cross(カナダ)
敗復3  ○[2−1(1-2,2-2,2-0)]David Bertolino(米国)
敗復2  ○[2−0(2-0,5-0)]Micah Burak(米国)
敗復1  ○[2−0(4-0,2-0)]James Yonushonis(米国)
1回戦  ●[0−2(2-3,1-4)]Eric Luedke(米国)

 
《2008年》
 
【世界ジュニア選手権(トルコ)】17位(35選手出場)
3回戦 ●[0−2(0-1,0-1)]Ali Rajabzadeh(イラン)
2回戦 ○[2−0(1-0,2-1)]Florin Popa(ルーマニア)
1回戦  BYE

 《2007年》
 
【8月:世界ジュニア選手権(中国)】5位(28選手出場)
3決戦  ●[0−2(1-6,0-3)]PEREZ Reineris Salas(キューバ)
敗復戦 ○[2−0(0-3,0-6)]Yuri Maier(アルゼンチン)
3回戦  ●[1−2(0-3,@-1,1-4)]Abdul Ammaev(ウズベキスタン)
2回戦  ○[2−1(3-1,1-4,7-4)]Leon Rattigan(英国)
1回戦  BYE



  ▲一覧ページへ戻る