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レスリング参戦を表明した柔道五輪銀メダリストの泉浩選手が、レスリングの合宿に参加【2010年8月11日】


 2004年アテネ五輪の柔道90kg級の銀メダリストで、現在は総合格闘技で活躍し、レスリングの大会出場を目指している泉浩選手(プレシオス=28歳、左写真)が8月10日、東京・味の素トレーニングセンターで始まった専大、神奈川大、警視庁の合同合宿に参加。学生のトップレベルの選手と激しいスパーリングを繰り広げ、“レスリング選手”としてのスタートを切った。

 青森県出身の泉選手は、柔道に打ち込むため小学校卒業と同時に単身で東京に移り、柔道私塾講道学舎に入門。弦巻中、世田谷学園高、明大、旭化成と柔道を続け、2004年アテネ五輪で銀メダルを取り、2005年世界選手権で優勝。2008年北京五輪の代表にもなった。2009年にプロ格闘技入りし、SRC(旧「戦極」)で闘っている。

 先月、味の素トレセンで行われたSRCの合同合宿の際に、総合格闘家としての成長のために、プロアマ・オープンのレスリングの大会に出場することを明言。今月9日に茨城・大洗サンビーチで行われたドン・キホーテ杯全日本ビーチ選手権にゲストとして来場した際に、あらためてレスリング挑戦を宣言した。

■慣れないことだらけだったが、手ごたえはあった!

 日本協会の福田会長の仲介もあって、この日からの合宿に急きょ参加。「前日、買ったばかり」というレスリング・シューズに足を通し、アテネ五輪の“メダル仲間”の田南部力コーチ(警視庁)の指導で技の研究やスパーリングをした
(右写真=タックルで脚を取られながらも粘る泉)

 主に相手をしたのは、昨年の全日本選手権フリースタイル84kg級3位の鈴木聖二と、全日本大学選手権同74kg級2位の江藤公洋(ともに専大)。長年、はだしで闘ってきた泉選手は「シューズに慣れない。まだ(シューズが)カチカチだし。足がパンパンです」としながら、時おり投げ技やタックルに挑むなど、未知の分野に果敢に挑戦。練習の合間には、周囲に「元気ないぞ! ファイト!」と声をかけるなど、やる気を見せた。

 「楽しい、というより、勉強させてもらいました。やりがいのあるスポーツだと思います」と練習後の感想。レスリングに挑む柔道選手のだれもが口にすることだが、「つかむところがないのは、やりづらいね」と言う。しかし、レスリングに挑むにあたっても「裸の柔道」を貫くとのことで、足払いや投げ技など、柔道の技を多用して勝負をかけるスタイルを貫くという。

 柔道からレスリングへ転向して大成した選手は、グレコローマンの選手の方が多い。そのため、泉選手もグレコローマン挑戦が予想されていたが、「足を使えるので、フリースタイルの方があっていると思います」とのこと。フリースタイルでの挑戦となりそうだ。

■来年7月の全日本社会人選手権で“デビュー”か?

 この日は学生トップ選手、しかも階級が下の選手(泉選手は96kg級への参加が見込まれている)との練習だった。同階級の全日本トップ選手ともなれば、さらに強い。しかし、「やれないことはない、という手ごたえを感じた。練習を積んでレスリングに慣れれば、無理ではない、という気持ちです」とのこと。相手をした鈴木選手は「とにかくパワーがすごかった。腰ががっしりしているし、レスリングの基本は十分にできているみたいです」と、柔道世界王者の強さを話した。

 注目の“デビュー戦”は、「中途半端な状態で出たくはない」として、当初は来年11月の全国社会人オープン選手権などが言われていたが、「予定より成長が早ければ、もっと早く出るのもいい」という。今年11月の同大会は早すぎるとしても、来年7月の全日本社会人選手権までには仕上がるのではないか
(左写真=脚を使った技を多用した泉)。 

 1964年東京五輪の柔道無差別で金メダルを取ったアントン・ヘーシンク(オランダ)は、レスリングの1958年世界選手権グレコローマン・ヘビー級に出場して6位に入賞しており、柔道の強豪選手はレスリングに対応するだけの格闘能力があるのは歴史が証明している。泉選手も、山下泰裕選手の好敵手でもあった正木照夫さんが1968年度の全日本選手権フリースタイル・ライトヘビー級に出場して優勝したことを知っており、柔道からレスリングへ転向して勝つのは不可能ではないと思っている様子だ。

 今月22日からは、全日本チームの合宿が同所で行われる。泉選手の姿は、そこでも見られることになるか。2012年ロンドン五輪へ向け、重量級の闘いが面白くなりそう。

田南部力コーチの技術指導 泉選手を指導する安生洋二コーチ(中央)、佐藤満強化委員長(専大教)と学生選手の練習を見学。 フリー894kg級全日本王者の松本真也(赤)との手合わせはなかったが、技術指導を受けた。


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