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【特集】強いリーダーシップで至学館を立て直す! 56kg級2連覇の坂上嘉津季【2010年8月18日】

(文=樋口郁夫)
 


 全国高校女子選手権で、昨年は2階級優勝に終わって東京・安部学院高の4階級制覇に差をつけられた愛知・至学館が、今年は4階級で優勝して、高校女子レスリングの“王座”を奪還。その中でも、56kg級の坂上嘉津季が2連覇を達成し、主将の意地を見せた。

 「(大学生の)先輩から『気持ちで負けるな』と言われ、絶対に勝つという気持ちで闘いました」と振り返る坂上。最初の2試合は、無失点ながらも体がよく動かずに攻撃できなかったそうだが、準決勝からスイッチが切り替わったという。

 同じ優勝であっても、今年の方が「はるかにうれしい」と言う。その理由は、4月のJOC杯ジュニアオリンピックで負けた浜田千穂(東京・日本工大駒場)に準決勝でリベンジしての優勝だったから。浜田は、その2ヶ月ほど前にはゴールデンGP予選「クリッパン女子国際大会」(スウェーデン)で2位となっており、世界でも闘える強さを持つ強豪だ。「(浜田に)勝ちたい、という思いで練習してきた」そうだ。

■妹の全国中学生選手権2連覇に刺激され、猛練習を受け入れる

 決勝は東京・安部学院高1年生ながら、全国中学生チャンピオンを経て進学した坂野結衣。「1年生には絶対に負けたくないという気持ちでした。後輩を倒して上がってきた選手なので、借りを返そうと思って闘った」そうで、4−2、7−0の快勝
(左写真)。高校生の大会の最後として、満足いく内容の優勝だった。

 刺激材料はもうひとつ。今年6月の全国中学生選手権で、妹の楓舞希(千葉・八木が谷)が2連覇を達成したこと。いやがおうでも刺激され、ハードトレーニングを受け入れることができた。

 8月初めには、新潟・十日町市で行われた全日本合宿にも参加。日本のトップ選手と激しい練習をこなし、山道の9km走ほか過酷なトレーニングも全力で打ち込んだ。「試合前、あんな厳しい練習をやってきたんだから」と自分に言い聞かせ、栄和人監督からも同じようなことを言われた。猛練習の末の栄光だった。

■“ドラフト”にかからなかった選手の意地が、成長のエネルギー

 栄監督は「昨年のこの大会の成績が悪かったので、主将として王座を奪い返そうとしてチームを引っ張ってきた。強いリーダーシップも成長につながっている」と、精神面の充実が実力アップにつながっていると分析する。

 妹と違い、自身の中学時代は1年生の時に3位に入賞しただけで、2年生、3年生といずれも2回戦敗退に終わっている。千葉・小玉ジュニア時代から通じても目立った成績はなかった。しかし「至学館でレスリングをやりたい」と志願し、入学を認めてもらった。プロ野球に例えるなら、ドラフトにかからず、テストを受けて入団してきた選手だ。“三顧の礼”を持って迎えられた選手にはない意地が、今の成績ににつながったのは言うまでもないだろう。

 今年の残る目標は、12月の全日本選手権(55kg級)で決勝まで残り、ふだん厳しくしごかれている吉田沙保里と闘うこと。「ボロボロにされてもいい。決勝の舞台で沙保里さんと闘ってみたいです」―。



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