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【特集】世界選手権へかける(18)…男子フリースタイル60kg級・小田裕之(国士舘大)【2010年8月31日】

(文=保高幸子)
 


 国内で最も層が厚いと言われている男子フリースタイル60kg級。若い小田裕之(国士舘大=左写真)が、並いる強豪を押さえて世界選手権代表の座を勝ち取った。国士館大現役の学生としては1993年の和田貴広(国士舘大)以来の世界選手権出場という快挙だけに、期待も大きく膨らむ。

■ケアレスミスは気分のムラを克服し、世界選手権の代表へ

 大学に入ってから世界を意識し始めたという小田。昨年、大学3年生ながら学生の二冠王者に輝き、12月の全日本選手権初優勝と大活躍だった。しかし、すんなりと成し遂げられたものではない。その半年前の6月の全日本選抜選手権では、2回戦で前田翔吾(当時日体大)に4−0とリードを奪いながらも、油断があだとなり逆転負けの屈辱を味わった。

 小田は吉田沙保里の後輩として、三重・一志ジュニアクラブでキッズ時代からレスリングを始め、多くのタイトルを獲得してきた。だが、昨年ころまでははこうしたミスや気分のムラがあり、全日本での優勝にはなかなか手が届かなかった。その頃について、自身では「自分のスタイルやくせ、性格を分かっていませんでした」と話す。

 しかしロンドン五輪に照準を合わせた小田は、きっちり修正してきた。「(屈辱の負けのあと)インカレで優勝したんですが、その仕方がよくて」と話すように、リードしても守らず、攻めの姿勢が崩れなかった。「全日本選手権も同じようにやればチャンスあるな、と確信が持てました」。その自信が全日本選手権優勝へつながった
(右写真)

 こうして確実なステップアップを見せ、残すステップは今年5月の全日本選抜選手権のみ。世界選手権に王手をかけたと言ってもよかった。ところが、予想と期待を覆すように初戦で66kg級から降りてきた石田智嗣(早大)に黒星。以前なら分からなかったが、もうここで崩れる小田ではなかった。すぐに気持ちを切り替えた。

 後輩や初日に世界選手権代表を決めていたフリースタイル120kg級の下中隆広(国士館大ク)に支えられ、「プレーオフに勝てば世界選手権に行ける」と奮起していた。迎えたプレーオフの相手は、昨年の世界選手権代表の前田翔吾(ニューギン)。「動くからやりにくい相手ではあるんです。でも自分のペースでやれば大丈夫、と思いました」と話すように、小田のレスリングを貫き、ストレートで勝って日本代表権を勝ち取った。

■レスリング人生は2012年ロンドン五輪まで! だから「やり切りたい!」

 「2008年は負けが込んでいましたが、その後、自分でも強くなったと思います」という小田。もう15年以上にもなるレスリング人生。「だからロンドン五輪以降は続けるつもりがないんです」と、2012年ロンドン五輪を自分のレスリング人生の集大成に設定している。「ロンドンでやり切りたい。絶対に金メダルを取らなければ」と言う
(左写真=小田の練習を佐藤満強化委員長が見つめる)

 そのステップとしての今年の世界選手権では、初出場がゆえにマークされていない状況。投げ、タックルがどれだけ通用するかを確認し、「ヤリギン国際大会(1月、ロシア)の決勝で負けたバシル・フェドロシン(ウクライナ)にリベンジしたい。バティロフやクドゥコフ(ともにロシア)や他の強い選手ともやりたいです」と目標を設定している。

 先輩にあたる下中隆広によると、「真面目な選手」という小田。長らくかけられてきた大きな期待に、応えるときが来た。日本男子レスリングのロンドン五輪の栄光への道には、今年の小田のメダルがなくてはならない。


 小田裕之(おだ・ひろゆき)=国士舘大、初出場
 1988年6月8日、三重県生まれ、22歳。青森・光星学院高卒。三重・一志ジュニアでレスリングを始め、2003年に男子で史上3人目の全国中学生選手権3連覇を達成。青森・光星学院時代には05年のインターハイ王者などに輝く。
 国士舘大に進み、07年の全日本大学選手権で2位。08年のJOC杯ジュニアオリンピックは66kg級で優勝。同年の全日本選抜選手権では、2回戦で五輪出場資格を取った直後の湯元健一を破る殊勲を挙げて2位に入った。09年に学生二冠王者となり、全日本選手権でも優勝。10年にプレーオフの末に世界選手権代表へ。。162cm。



◎小田裕之の最近の国際大会成績

 《2010年》
 
【7月:ゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)】=18選手出場
1回戦 ●[0−2(0-3,1-3)]Kordiani Malkhaz(グルジア)

 【3月:メドベジ国際大会(ベラルーシ)】5位(26選手出場)
3決戦  ●[0−2(0-2=クリンチ、0-1)]Ratmir Kerefov(ロシア)
敗復戦 ○[2−1(0-1,TF7-0,4-0)]Ildar Ganiatulin(ロシア)
2回戦  ●[0−2(2-3,0-1=クリンチ)]湯元健一(ALSOK綜合警備保障)
1回戦   BYE

 
【1月:ヤリギン国際大会(ロシア)】2位(37選手出場)
決  勝 ●[0−2(0-3、TF1-7=1:56)]Vasil Fedoryshyn(ウクライナ)
準決勝 ○[2−1(1-0=2:08,0-1=2:00,1-0=2:05)]Saritov(ロシア)
4回戦  ○[2−1(0-1=2:02,1-0,@-1)]Banzarak(ロシア)
3回戦  ○[2−1(1-0=2:04,0-1,1-0=2:30)]Magomed(ベラルーシ)
2回戦  ○[2−1(3-0,0-2,3-0)]Batuduun(モンゴル)
1回戦   BYE

 《2007年》
 【カナダカップ=個人参加(カナダ)】
3位
 =内容不明=



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