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【特集】未来のレスリング記者? 高橋海里奈(早大)と車屋綾香(日大)がマスコミへ就職【2010年9月2日】

(文=増渕由気子)



 昨今の経済不況にともない、大学生の就職内定率は昨年よりも落ち込んでいるという。その打撃は大学レスリング界も同じ。現在の大学3、4年生は、練習のかたわらで就職活動に力を入れている。

■学生チャンピオンの高橋海里奈はテレビ東京へ

 そんな中で、8月末の全日本学生選手権(大阪・堺市)の女子63kg級で優勝した高橋海里奈(早大=
右写真)は、見事、テレビ東京の内定をゲット。学生の集大成として臨んだ、今大会でその力を発揮し初優勝を飾った。

 高橋は2007年春、「オリンピックに出る」という大きな夢を持って早大に進んだ。だが、自身の階級(63kg級)の不動のチャンピオンは伊調馨(ALSOK)だ。レベルの差を痛感し、「大学でレスリングは終わりになるかも」と、セカンドキャリアを真剣に考え始めたという。就職活動を始めた当初は、製薬会社をメーンにエントリーしていた。「ですが、全部不採用でした」と縁がなく、残った持ち駒はテレビ東京だけになっていた。

 「エントリーシートに伊調さんと闘った天皇杯の写真を貼ったら、書類選考が通ったんです」。面接も伊調とのエピソードについてかなり突っ込まれた質問をされたというが、おかげで話は弾んだという。「レスリングを4年間やっていたから、自分というものが確立できた。レスリングをやっていなかったら、合格できなかったと思う」と高橋。ひとつのことをやり遂げた純粋さが、面接官の心に響いたのだろう
(左写真:2009年全日本選手権で伊調と闘う高橋=赤)

 テレビ局に内定したからといっても、高橋はマット上で手を抜かなかった。「来春から就職することで、レスリングをやめるのは決定的。だから最後までしっかりやろう」。早大のOBは毎年、大手企業に就職する学生が多い。昨年、フリースタイル55kg級で学生王者になった藤元洋平はキリンビールに進んだ。高橋が「洋平先輩は、春に内定をもらってから急に伸びたんです」と言うとおり、藤元のラストシーズンは目を見張るものがあった。その影響もあって、高橋も今大会でいい結果を出せたようだ。

■日大の車屋綾香はスポーツニッポンに内定! 憧れの女性記者の道へ

 女子55kg級の車屋綾香(日大)も、5月にスポーツニッポンから内定をもらった。配属は決定してないが、女性記者としての期待が高まる
(右写真=車屋と日大・富山英明監督)

 惜しくも、今回の全日本学生選手権では初回戦で敗退し、有終の美を飾ることはできなかったが、そもそも車屋にとって、レベルの高い大学までレスリングをやり遂げたことは奇跡のようなことだった。

 「股(こ)関節に先天的な障害があって、小さいころ、ずっとギブスをしてたんです。私は障害の重さをあまり分かっていなかったのですが、親は医師から『歩けなくなるかもしれない』と宣告されていたようです」。幸運にも大事に至らずに成長。中学までは柔道部に所属した。「私が中学のときに、女子レスリングが五輪競技になったんです。テレビで山本聖子さん(世界V4)を見て、レスリングに転向しました」。

 日大に進学し、五輪3連覇を目指す吉田沙保里(ALSOK)と同階級で闘った
(左写真=2007年ジャパンビバレッジクイーンズカップで吉田と闘った時の車屋)。レスリング以外で得意だったことは、「文章を書くこと」。この特技を生かせる道として新聞社を片っ端からエントリー。見事にスポーツニッポンから内定を得た。

 日本レスリングの生みの親、故八田一朗会長の教えに「マスコミを味方にしろ」という項がある。そのため、レスリング協会はマスコミ対応を常に柔軟にしてきたが、進む人間は野球やサッカー、ラグビーなどに比べると(競技人口比でも)少なかったのが現状だ。

 しかし昨年、早大から中村大吾(全日本大学グレコローマン選手権2位)がスポーツ報知に進み、活躍し、増加傾向にある。富山監督は、女性2人のマスコミ入りを大歓迎。「レスリングを盛り上げてくれれば」と話した。高橋、車屋が、レスリング界を盛り上げる縁の下の力持ちとなる!

 車屋綾香さんは、スポーツニッポンへの入社を前に、記者活動を体験し、勉強するため、9月6〜12日にモスクワで行われる世界選手権に本ホームページの記者として同行。記事を執筆します。現役のレスリング選手の視点から見た記事にご期待ください。

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