▲一覧ページへ戻る


   

【特集】一瞬の自信喪失と迷いが黒星へ…男子グレコローマン66kg級・藤村義(自衛隊)【2010年9月7日】

(文=保高幸子、撮影=矢吹建夫)




 昨年8位だった男子グレコローマン66kg級の藤村義(自衛隊)の2度目の世界挑戦は、初戦敗退に終わった。しかし、ウラジミール・ポグディン(ウズベキスタン)相手に組み手を攻勢に終始積極的に攻め、優位を保っていた(右写真)

 第1ピリオドは、スタンド戦で攻勢ながらも0−0。グラウンド戦ではガッツレンチを三回連続で決めるなど、滑り出しはこのうえなく順調。「勝てるな、と思いました」と本人も手応えを感じていた。第2ピリオドもスタンドは自信を持って攻め、終始押し気味。しかし0−0で迎えたグラウンド・ポジションの攻防で、タイミングのいいがぶり返しをくらってしまう。そして最終ピリオド、0−0で迎えたグラウンド戦の攻防。選択権がある藤村は攻撃側を選択した。

 「第2ピリオドで返されてしまったので、弱気になっていました」。セコンドの指示は防御だったが、自分で決めた選択は攻撃だった。しかし、迷いがあった藤村は、しばらくしてレフェリーに対し防御選択を伝えた。しかし遅過ぎ、聞き入れられなかった。変更しようとしたのは「返すのも守るのも自信がなかったということかな、と」と振り返る。迷いがあっては勝てないということだろう。

■優勝したロシア選手は、3月に勝っている相手! 実力は世界のトップ級

 結局、相手の強固な守りに組ませてもらえず、ポイントを取ることができずに第3ピリオドを落とした。日本側は相手がオープンしなかったことを理由にチャレンジしたが、最終決定権を持つジュリーの判断で、相手の防御に問題はなかったとなり、チャレンジ失敗。藤村の世界選手権は終わった。「(そもそも)第2ピリオド守り切っていれば、第3ピリオドはなかった」と反省一色だ
(左写真=第3ピリオド、グラウンドを選択し、攻め切れなかった藤村)

 その中でもよかったのは、ガッツレンチを返せたこと。「組めば返せるという自信がつきました」。今年は初戦敗退で、昨年の3試合の経験と比べれば少ないが、学ぶことは多く、自分の技への自信もついた。

 グレコローマンの伊藤広道監督(自衛隊)は「私の判断ミスもありました」と責任をかぶる一方で、「藤村はクラッチさえ組めば返す自信がある」と太鼓判を押している。「今回優勝したロシア(アンバコ・バチャーゼ)は3月のハンガリー・カップで勝っている相手。実力はある。あとはスピードと、大胆な攻撃を追求する事が課題だ」と続けた。

 藤村は「今日の相手が出てくるかはわからないですけど、アジア大会に向けてディフェンスもオフェンスも磨いて、金メダルを目指したいです」と、次の目標に向いた。来年は五輪がかかった世界選手権も待っている。2年先を見つめて走り始めた藤村に見えているゴールは、最高峰の舞台で金色のメダルを首にかけた姿。

 それは決して夢ではない。まずは今年11月、アジアの最高峰を制し、来年からの五輪へ続く長い道のりにはずみをつけるだろう。



  ▲一覧ページへ戻る