▲一覧ページへ戻る


   

【特集】世界V7も、五輪階級のレベルの高さを実感…女子48kg級・坂本日登美(自衛隊)【2010年9月9日】

(文=車屋綾香、撮影=矢吹建夫)




 2008年に東京で開催された世界女子選手権51kg級で金メダルを獲得したのを最後に、マットから去った坂本日登美(自衛隊)が、48kg級の選手として2年ぶりに世界の女王の座に帰ってきた(右写真=優勝を決めた直後の坂本)。通算7度目の世界一。

 優勝を決めた瞬間に両手でガッツポーズをつくり、レフェリーから手を挙げられてマットに一礼すると、セコンドにいた恩師の栄和人・女子強化委員長(至学館大教)と藤川健治コーチ(自衛隊)から肩車をしてもらい、観客席にいた日本チームに大きく手を振って喜びを表した。

 栄和人強化委員長から「世界最高のレスラー」とお墨付きをもらい、世界でも国内においても安定した闘いをする坂本だが、今回はそうはいかなかった。2回戦のウクライナ戦で、開始早々に体勢を崩したところをフォールされそうになったり、決勝でも第1ピリオドを奪われたりと、「オリンピック階級はレベルが違います」と、オリンピックの厳しさを肌で感じる大会となった。

■妹のほか、多くの人のサポートを受けての金メダル

 だが、栄強化委員長が「ロンドン五輪へ向けて、今、厳しい闘いをしておいた方がいい」と口にしたように、このような闘いを強いられることによって厳しさを知っておくことが、2年後のロンドン五輪金メダルへとつながるに違いない。

 表彰台では喜びの涙を流し、目頭を熱くして一番高いところへ上がる日の丸を見つめる坂本の眼差しがあった。引退して今は姉のサポートをする妹・真喜子からは、モスクワへ出発する際に手紙を、試合前にはメールをもらったという。

 坂本にとって、間違いなく心強い援軍になったはず。「自分1人では取れなかった金」と、たくさんの人の力や思いを感じながら成し遂げた48kg級で初めての金メダルだった
(左写真=決勝でオーザクをニアフォールへ追い込む坂本)

 2008年に現役引退をしてから、自衛隊と全日本チームのコーチとなってマットを去ったが、昨年の世界選手権で敗れて、その後、引退を決めた妹からの助言で、オリンピックを目指して現役復帰を決めた。コーチになって感じたことは「マットに(選手として)立てる幸せ」だという。

 この幸せと、五輪出場を成し遂げられなかった妹の思いを胸に、念願の五輪出場、そして金メダル獲得を目指す。坂本の闘いは、48kg級の世界選手権を経験し、やっと本格的に始まった。



  ▲一覧ページへ戻る