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【特集】レスリングから離れ、新たな強さを身につける…女子72kg級・浜口京子(ジャパンビバレッジ)【2010年9月11日】

(文=車屋綾香、撮影=矢吹建夫)




 「うれしくて、うれしくて、信じられない」−。2年ぶり14度目の世界選手権出場となった女子72kg級の浜口京子(ジャパンビバレッジ)が銅メダルを獲得した。北京五輪5位のマイデル・ウンダ(スペイン)を破って銅メダル獲得が決まると、雄叫びをあげて応援席にいた両親、そして応援団へ満面の京子スマイルを披露した(右写真)

 初戦から危なげない試合が続いた。「落ち着いて試合することができました」の言葉のとおり、今までの浜口とは違う、何か一歩踏み出せたような、そんな姿がマット上にはあった。

 浜口は、どちらかというとリードされると焦って混乱状態になってしまい、レスリングが雑になって真の実力を発揮できなくなってしまうタイプである。しかし、今回の浜口は、第1ピリオドや1ポイントを先取されても物動じしない落ち着いた状態で試合を続けることができていた。

 それは、「今回の世界選手権へ向けて、レスリングに毎日向き合ってきました。強くなりたい、という気持ちはあったけど、前までの私は、強くなりたいと思いながらも、どこかやらなかった自分がいた。自分にとって何が必要なのかを考えるようになったし、試合前の準備がしっかりできたことが、すべて自信になりました」という試合後のコメントの中に理由が明かされていた。

■2012年のロンドンでは、心技体そろった京子が見られる?

 「いつもの視点と異なったところから見ると、それまで見えていなかったものが、見えることがある」と言われる。浜口は2008年の終わりに、それまでレスリング漬けであった毎日から、しばらくの休養に入った。その期間、「レスリングから離れることで、違ったレスリングの見方ができた」という。その期間が浜口に新たなるものを与えてくれたのだろう。

 浜口にとって、モスクワは1995年に17歳で初めて出場した世界選手権の地であり、原点である。あの時から15年が経ち、浜口は32歳。今でも現役でレスリングがでていることを、「不思議。信じられない」と、喜びの表情とともに口にする
(左写真=日本から応援に来た父・アニマル浜口さんとメダルにキッス)

 記者の中から“ロンドン・オリンピック”という言葉が出ると、笑みを浮かべて、「ロンドンは目の前。1つ1つこなしていけば、もうオリンピックになると思う」と答えた。目標としている3度目のオリンピック出場まであと2年あるが、浜口にとってその2年とはあっという間にやってくるものなのだろう。

 レスリングから離れた時期があったものの、体力は今まで以上についていると実感しているようで、今後勝っていくためには技術をもっと磨くことが必要だという。体力、そして精神力は、自信を持って闘えるほどに成長している様子がうかがえた今回の世界選手権。“心技体”がそろうまであと一つとなった。心技体がそろい、パーフェクトな状態になった浜口を、ロンドンのマット上で見られるのかもしれない。



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