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【特集】初の大舞台に「何もできなかった」…男子フリースタイル60kg級・小田裕之(国士舘大)【2010年9月12日】

(文=車屋綾香、撮影=矢吹建夫)




 世界選手権という大舞台は簡単には勝たせてくれなかった。代表権争いが激しさを増している日本の男子フリースタイル60kg級、その激戦を勝ち抜いて出場権を獲得し、初出場を果たした小田裕之(国士舘大)だったが、まさかの初戦敗退を喫した。

 初戦の相手はモンゴル選手。特に実績を持っている選手ではなく、海外での経験を積んできている小田にとっては好都合の選手かと思われた。しかし、第1ピリオド開始からいつもの果敢に攻めていく小田の姿はなかった。

 「第1ピリオドは緊張して何もできませんでした」と振り返るように、相手から1点を先取されて、それを追わなければいけないものの、どこか攻め切れない様子がうかがえた。第2ピリオドはバックの取り合いとなって小田が1点先取をし、ピリオド1−1とする。

 最終ピリオド、両者ポイントなしのまま迎えたクリンチ戦。ボールピックアップで攻撃権を得たのは小田だったが
(右写真)、相手の防御が勝り、クラッチしていた手が外れて相手から1ポイントを取られてしまう。

 小田が「第3ピリオドは、びびってしまって攻められませんでした」と反省するように、本来持っているものを全くと言っていいほど出すことができなかった。報道陣からの質問に対し、「攻めることができなかった、緊張した。何もできなかった」の言葉を何度も繰り返していた。

■今回の経験をステップに、ロンドン五輪へ向けて生まれ変われるか?

 計量20分前にやっと体重が落ちたという。試合への影響は全くなかったようだが、体重調整の仕方も今後の課題としていかなければならないかもしれない。

 「ウォーミングアップをして、気がついたら試合だった」―。世界選手権という大きな舞台の雰囲気、そして極度の緊張感を味わった今回の大会。今年1月に行われた「ヤリギン国際大会」(ロシア)2位など、国際大会での入賞経験を持つ小田の力は、決して世界で通用しないものではない
(左写真=クリンチの攻撃権を生かせず、がっくりの小田)

 セコンドで小田の試合を見守っていた田南部力コーチ(警視庁)は「いつもの“がさつさ”がなく、アタックが足りなかった。反省点が多い試合。本人なりに修正していってほしいし、努力をする選手だから、その努力を試合に出せるようになってもらいたい。今回の経験を踏まえて成長していってほしい」と今後の活躍に期待をしていた。

 自らの集大成と考えている2012年ロンドン五輪で、表彰台の一番高いところへ上がるために、今回の経験をステップに生まれ変わっていくだろう小田の姿から目が離せない。



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