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【特集】けがと減量の連続を乗り越え、真の大学王者へ…中井伸一(中大)【2010年10月15日】

(文=池田安佑美)



 全日本大学グレコローマン選手権74kg級は、"中大スカイツリー”中井伸一が大会2連覇を達成した(右写真)。大学3年生の昨年、188cmの長身を生かして初優勝。最終学年の今年はさらなる飛躍が期待されたが、8月の全日本学生選手権(インカレ=大阪)は両スタイルともに3回戦敗退。9月の千葉国体は、地元千葉からの出場とあって期待が高まったが、優勝はならなかった。

 不調の原因は、「けが」の一言に尽きる。中井は、「実は夏合宿のときに、あばら骨を骨折してしまいまして」と不調の原因を告白。痛みは今でも残っている状況だった。

 だが、大会最終日に控える中大のエース、84kg級の天野雅之とともに“中大ツインタワー”の存在を示すためには、優勝は必須条件。中井の気持ちを盛り上げたのが、今大会から復帰してきた日体大の存在だった。大学3年で学生王者にはなった中井だが、日体大不在での優勝で、本当の頂点を極めた気がしなかったという。

■手ごわかったが、実戦を離れていた強豪に競り勝つ!

 グレコローマン74kg級で、学生界の実力ナンバーワンの呼び声が高いのは、昨年学生2位の渡部友章(日体大)。約1年ぶりの試合に照準をピタっと合わせて、下馬評どおりに決勝に上がってきた。「渡部選手を倒せば、本当の学生王者になれる」と意気揚々と中井はマットに上がった。

 だが、中井はすぐに弱気になる。手合わせした渡部が予想通りに強かったからだ。「優先権をもらった第1ピリオドのグラウンドは、ローリングを返せないと思ったし、ディフェンスに回った第2ピリオドは、守れないと思った」と振り返る。

 「インカレからの2ヶ月間、(大会が続いて)2週間に1度減量している状況だったんです。体も大きくなって、今では毎回5kgほど減量がありました。一方、渡部選手は、実戦経験は積んでないけれど、1年間じっくりと調整してきている。どちらがいいのかな、と不安になる部分がありました」。だが、結果は中井の気持ちと逆になった。ローリングは決まり
(左写真)、ディフェンスも完璧で、第2ピリオドは渡辺が強引に仕掛けたローリングにうまく乗って優勝を決めた。

 インカレ、全日本学生王座決定戦、国体、そして今大会と立て続けに試合をこなし、試合&減量疲れがピークに来ていた中井だったが、試合経験が渡部の潜在能力を上回った格好。中井は、「試合していたほうが、良かったんだと分かりました」と納得の笑顔を見せた。



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