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【特集】高校時代の宿敵倒して初の学生王者へ…鈴木康寛(拓大)【2010年11月12日】

(文=池田安佑美)



 全日本大学選手権60s級は鈴木康寛(拓大)が初優勝を遂げた(右写真)。大学1年の昨年、春の新人戦で両スタイル優勝を成し遂げて以来、コンスタントに大会で上位に食い込んでいた。高校時代、三冠王者に輝いた田中幸太郎(京都・京都八幡=現早大)やインターハイMVPの井上貴尋(兵庫・育英=現日体大)の影に埋もれていた鈴木。ダイヤの原石がやっと光を放ち始めた。

 この大会は個人戦であるとともに、大学対抗戦でもある。この面においても鈴木のポジションは重要だった。3階級で決勝に駒を進めた拓大のトップバッターとして出番が回ってきた。「最初の出番だから、ダサイ試合はできない」と気合を入れたが、今大会は最初から調整がイマイチだった。だが、悪い調子なりにトップギアに持っていけたのは、決勝戦の相手、井上の存在だった。

 井上は日体大入学後、一時は66s級に階級を上げたが、再び60s級に下げてきた。減量バテは隠せず決勝戦になっても頬はコケたまま。「相手は減量バテに加えて、(チームの出場停止処分によって)試合勘が鈍っている」と察知した鈴木は、第1ピリオド、タックルからのワンツー攻撃で3−0と理想的に最初のピリオドをゲットし、優勝に王手をかけた。

■学生2巨頭のいない優勝では満足できない!

 しかし、第2ピリオドになると足が止まる。体勢を崩しながらも次々と攻撃してくる井上に対して、鈴木は受けに回ってしまった。それでも返し技などで終盤までリードを保ったが、ラスト数秒でスタンドから3点となるがぶり返しを決められてしまって6−7。(スコアは、チャレンジ失敗で最終的に6−8へ)

 両者ともに疲労困ぱいの第3ピリオド、互いに動けずに組み合って2分が終了。クリンチの優先権を生かした鈴木がテークダウンを奪い
(左写真)、両陣営で計4度のチャレンジ(ビデオチェック要求)がリクエストされた激戦を制した。

 「内容はよくなかったけど、ずっと勝てなかった相手に勝てたことはよかった」。鈴木の優勝に勢いがついた拓大は、66s級、74s級と優勝。4階級うち3階級を制する原動力となった。

 大学2年で大学王者となった鈴木だが、「まだ、自分は全日本レベルではない」と自重。今大会は、学生王者で先月の世界学生選手権も制した石田智嗣(早大)や、アジア大会代表の小田裕之(国士舘大)は出場していない。「来年、石田さんに勝てるようにしたい」と、12月の全日本選手権制覇よりも、まずは学生で絶対的な地位を築くことを目標に定めた。



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