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【特集】4年生の武富隆が、リーグ戦王者の意地見せて優勝【2010年11月13日】

(文=樋口郁夫)



 全日本大学選手権初日の4階級で優勝がなかったリーグ戦の覇者・早大は、最終日に2階級で決勝へ進出。84kg級の山口剛は敗れたが、96kg級の武富隆が優勝。この勝利が効いて、大学対抗得点で日大を0.5点差で破り、2位に浮上することができた。

 躍進する早大だが、この大会で団体3位以内に入ったことは、1975年の第1回大会以来一度もなく、今回の2位が最高の成績。それだけに価値ある優勝となった。決勝戦の終了直前のバッティングで左まぶた上から大量出血したため、喜びの表情は見られなかったが、学生最後の大会を優勝で飾り、気持ちはチームメートへ向かってガッツポーズしていたことだろう。

■目の前の勝利に逃げられたが、気力は落ちず!

 決勝の脇本恭平(立命館大)戦は大激戦だった。そもそも、西日本の大学の選手が決勝に上がってくるとは思っていなかった。組み合わせを見て、決勝では昨年優勝の金沢勝利(山梨学院大)か、馬場貴大(専大)が相手となることを予想していた。よく知らない相手だったので、脇本を知っているチームメートから情報を得てマットへ。

 第1ピリオドは辛うじて1−0で勝った。第2ピリオドは0−0でクリンチの攻撃権。相手のタックル返しに遭ったが
(左写真)、当初は自分のテークダウンのポイントとされた。しかし相手陣営からのチャレンジ(ビデオチェック要求)。

 その結果、レフェリー、ジャッジとも自分のテークダウンを有利としてくれた。しかし、ジュリーがき然とした態度で相手のタックル返しの3点を挙げ、ピリオドスコア1−1の振り出しへと戻った。

 手にしたと思った勝利が離れたのだから、気落ちしてもおかしくない。だが、気力は落ちなかった。「チームの応援がありましたから、最後まであきらめない気持ちがありました」。第3ピリオドの序盤に相手を場外に出して1点を取ると、その最少ポイントを必死に守り切って優勝を引き寄せた。

 初日は、授業の関係で会場に来られない下級生もいて、応援が今ひとつだったという。最終日はOBを含めて多く集まり、「ワセダらしい応援がありましたね」。この応援こそが、早大のばん回の原動力だったのだろう。

■卒業後はグレコローマンに専念し、五輪出場を目指す

 最近、早大に進学する高校の強豪選手が多い。そのため、ここ2、3年間は気が抜けない毎日だったという。しかし、そのおかげで高校時代に全国王者がないところから実力をつけることができた。「下からのプレッシャーがあることが、チームづくりに欠かせないことですね。来年以降のチームの躍進を期待します」と、今年リーグ戦のみの優勝で終わった心残りの払しょくを後輩に託した。

 自身は、自衛隊入隊が希望。得意なグレコローマンに専念し、さらに上を目指す気持ちを持っている。うまくいけば、2012年ロンドン五輪の戦線に加わるつもり。「ダメでも、2016年リオデジャネイロ五輪までやる?」の問いに、「いえ、まだ若いですから、体が動く限りはやります」と、2020年五輪をも目指してレスリングに愛情を注いでいくそうだ。



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