▲一覧ページへ戻る

 

【特集】2階級上での挑戦に勝利…男子73kg級・水野真斗(京都・網野中)【2010年11月29日】

(文=樋口郁夫、撮影=保高幸子)



 第1回の全国中学選抜大会で、男女の全階級を通じて唯一の全国王者同士の決勝となった男子73kg級は、59kg級王者の水野真斗(京都・網野中=網野町教室/右写真)が66kg級王者の白井勝太(東京・稲付中=JOCアカデミー)を破った。

 「中学の3年間で一番うれしい優勝です。73kg級に出た以上は、勝ちたかった」と水野。ふだんの体重は65kgくらいで、66kg級への出場であっても体重の上限には達していない。それでも73kg級にエントリーしたのは、同じ全国2連覇の強豪の白井と闘いたかったから。無謀とも思える2階級上の挑戦を乗り越えて勝利を手にしただけに、うれしさもひとしおだ。

■ともに全国少年少女選手権8連覇の強豪

 白井とは、2007年の全国少年少女大会で、水野が42kg級で、白井が54kg級で勝ち、ともに8年連続優勝を達成した同志。卒業後は、水野が東京を離れて京都・網野へ行ったのに対し、白井は福井を離れて東京へ移った。階級が違うため対戦する機会はなかったが、同じ全国V8の選手として、意識していたことは容易に想像できる。

 試合は第1ピリオドから積極的に攻め、1−0で先制
(左写真)。第2ピリオドもリードを奪っていたが、途中で同点に追いつかれ、5−5のラストポイントで取られ、タイスコアとされた。第3ピリオドは0−0のまま試合が進み、1ポイントを争う展開。「クリンチ勝負になったらダメだ」という気持ちを強く持った水野がラスト30秒くらいに仕掛け、貴重な1点をもぎとった。

 作戦は「がむしゃらに攻めること」。体重の重い相手とは、練習で網野高校の重量級の選手とも積極的に練習しているので、「不安はなかった。いつも通りにやればいいと思った」と言う。自分を信じることができた要因は、「練習の量です」とのこと。

 積極性については、吉岡治監督も高評価した。第2ピリオド、リードしながら追いつかれたのは「フォールを狙って仕掛けたから。無難に勝とうと思ったら、そのまま逃げ切れたと思う」と分析。積極性が、この試合に関しては窮地を招いたわけだが、「逃げて勝つより、次につながる」と高評価。「目先の勝利にこだわらない闘いをさせてきた」という指導通りの試合をしてくれたことに満足そう。

■網野での3年間の最大の成長は、「精神面の成長」(吉岡治監督)

 準決勝までは20秒以内のフォール勝ち2試合と、無失点の判定勝ち1試合。全国大会2度優勝に加えて、2階級上ででも通用する実力を身につけたのだから、網野町教室の門をたたいたのは正解だったと言える。前述の通り、重量級の高校生選手とも練習を重ねることで、「パワーがついた」のが3年間の最大の収穫だという
(右写真=第3ピリオド、ラスト30秒に決まったタックル)

 網野高校進学後は、いっそうパワーをつけることのほか、「もっとスピードをつけ、動けるようになりたい」という課題を掲げる。階級はこの大会より1階級下げて66kg級を予定しており、まず「1年生インターハイ王者を狙います」ときっぱり。

 吉岡監督は「タックルのほか、重量級の選手と胸を合わせても力負けしない。離れてよし、組み合ってもよし」と、その技量を評価する一方、3年間で最も成長したのは精神面だという。ともすると“ゴーイング・マイ・ウェイ”だったのが、「高校生の試合では先輩を応援して盛り上げる。練習では下級生を引っ張るようになった」そうだ。リーダーとしての自覚が出てきたということか。

 体力も精神面も大きく成長した水野。この勝利を大きな自信にして、来年は高校レスリング界でどんな暴れっぷりを見せてくれるだろうか。



  ▲一覧ページへ戻る