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次世代の育成を考慮した日本レスリング協会の取り組み
  
-ナショナルトレーニングシステム(NTS)ブロック研修会-【2010年12月27日】


(日本協会強化委員会・テクニカルディレクター=久木留毅)



 全日本選手権大会が終了した翌日から、日本協会が推進しているNTSブロック研修会が全国を6ブロックに分けて開催されている(12月24日〜28日)。本協会のNTSは、国が立案した「スポーツ振興基本計画(我が国のスポーツ振興策)」と(財)日本オリンピック委員会(以下JOC)が作成したJOCゴールドプラン(国際競技力向上策)に則って推進している事業である。

 トップアスリートが世界で勝ちメダルを獲得するためには、ハードトレーニングと緻密(ちみつ)な戦略が必要であることは言うまでもない。さらに重要となるのが、ジュニア層の育成であることは言うまでもない。そこで文部科学省は、ジュニアアスリートの育成を重点施策として「競技者育成プログラム」の作成を全ての競技団体に義務づけてきた。

 本協会では、JOC加盟団体の中でいち早く2001年に強化委員会が中心となり、高校の指導者の方々の協力を得て全国を6ブロックに分けて現在のNTSの基盤を作り、競技者育成プログラムを推進してきた。ブロック研修では、ナショナルチームのコーチとトップクラスの選手を指導者として派遣し、技術指導と実践練習を組み合わせた内容を実施している。

 NTSは2001年12月にトライアルとして東京で実施された。実際のブロック研修としての開始は2002年12月からであり、今年で9回目を迎えることになる。今年も各ブロック約150名〜200名のジュニアレスラーが参加し、多くの技術を吸収している。写真は、NTS中国・四国ブロック(山口県で開催)においてフリースタイルの指導をする佐藤満強化委員長(専大教=
上写真)と、グレコローマンの指導を行っている嘉戸洋コーチ(環太平洋大教=下写真)。

 ともに、ジュニアレスラーが真剣に聞き入る指導を行っていた。また、ナショナルチーム・コーチの指導を間近で見られる機会となり、どの会場でも熱心に映像を撮影する高校の指導者も少なくない。

 佐藤強化委員長は、富山前強化委員長時代からジュニア育成の中心的存在であり、NTSを最初から立案した中心人物である。そのNTSから発掘・育成されたフリースタイルの稲葉泰弘選手、湯元兄弟、米満達弘選手、グレコローマンの長谷川恒平選手、松本隆太郎選手らが現在のナショナルチームの中心選手であることからも理解できるように、育成には時間が必要である。2012年ロンドン・オリンピックの次の世代を育成していくためにも、更なるNTSの充実が必要であろう。

 毎年2月にはNTS中央研修会を開催している。昨年よりナショナルチームの合宿と同時期に開催し、参加した選手からは好評を得ている。NTS中央研修会では、以下の内容でプログラムが組まれている。

1) レスリングの技術指導(フリースタイル/グレコローマン共にナショナルコーチより指導)
2) 実践練習(代表選手とのスパーリングも経験できる)
3) レスラーに必要な栄養の知識(国立スポーツ科学センター栄養スタッフの講義を受講)
4) レスラーに必要なウエイトトレーニングの知識と技術(国立スポーツ科学センタートレーニング体育館スタッフによる講義と実技の指導)
5) トップアスリートに必要なアンチドーピングの知識(日本アンチドーピング機構スタッフの講義を受講)
6) トップジュニア選手の形態・体力測定

 NTS中央研修会は、JOC、国立スポーツ科学センター、日本アンチドーピング機構等の団体の協力得て実施している。宿泊場所は、各競技の代表選手が合宿を行う東京都北区の「味の素ナショナルトレーニングセンター」である。

 長期的な視点に立ったジュニアレスラーの育成戦略は、国際競技力向上のためには不可欠な施策である。この意味からもNTSをさらに充実して行く必要があるであろう。

佐藤満委員長の技術指導 小平清貴コーチ(左から2番目)、小幡邦彦・山梨学院大コーチ(その右)らトップ・コーチも参加。 ナショナルチームのコーチによる技術指導をビデオにおさめる高校の指導者。


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