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学生選抜チームがブルガリアから帰国【2010年3月4日】


 ブルガリアに遠征していた学生選抜チームが3月3日、成田着のオーストリア航空で帰国した。昨年までの米国遠征に代わり、今年から実施した合宿をつけての欧州遠征。滝山将剛団長(国士舘大教)は「練習試合もやってもらうことができ、いい経験をさせることができた。現地ではブルガリア語の話せる筒井穣さん(日本サンボ連盟)がチームをお世話してくれ、雑用に気をとられることなく練習と試合に専念でき、いい遠征だった」と総括した(右写真=成田空港であいさつする滝山団長)

 一部で審判の地元びいき判定と思える試合があったが、「それを乗り越えるだけの演出をしてほしい」と言う。演出というのは、例えば1点をリードして残り十数秒になった時、相手の脚にしがみついて時間を稼ぐなど、勝つための手段であり、ずるさであり、地元びいきの判定をさせない戦術のこと。正直に闘うだけでは地元ぎいき判定に巻き込まれてしまうという。これらの経験をもとに、10月にイタリアで予定されている世界学生選手権へ向けて、「若いコーチががんばってほしい」と結んだ。

 フリースタイル・コーチの全日本学生連盟・和田貴広強化委員長は「本格的な国際大会は初めてという選手も多かった。世界のレスリングがどんなものか体感してくれたと思う。世界基準をそれぞれの所属に持ち帰り、今後の強化の指針にしてほしい」と話した。地元びいき判定については、「これまでには、もっとひどい大会もあった。それに比べればいい方。地元びいき判定はあるものだと思ってほしい」と厳しさを求めた。

 大会(フリースタイル=ダン・コロフ国際大会、グレコローマン=ニコラ・ペトロフ国際大会)では、グレコローマン66kg級の岡本佑士(拓大)と同96kg級の藤本健治(拓大)が銅メダルを取った。

 岡本はハンガリーで合宿中の全日本チームに合流するため途中で離団。この日、唯一メダルを持ち帰った藤本
(左写真)は「初めての海外の銅メダル。4年生の最後にいい成績を残せました」と振り返った。これまで世界学生選手権やデーブ・シュルツ国際大会(米国)に出場したが、メダルには手が届かなかっただけに、「最後に勝って大会を終わることは気持ちがいい」と言う。

 ヨーロッパのグレコローマンは、グラウンドになると必ずと言っていいほどリフトを狙ってくるそうで、「日本選手とは意識が違いますね」と言う。卒業後は警視庁へ進むが、“プロ選手”の所属する第6機動隊ではなく一般の警察官。どれだけレスリング活動ができるか分からないそうだが、「社会人の大会や国体などに出られて、しっかりできる状況になれば、まだ頑張りたい」と話した。

 岡本は吉本収コーチを通じ、「ブルガリア選手が中心の大会だが、欧州選手が多く出場しており、とてもよい経験になった。準決勝は、ブルガリア1位の選手であったため挑戦するつもりで向かったが、自分のレスリングが出せず完敗した。しかし、3位決定戦では自分のレスリングの形にはまり、試合運びがスムーズにでき勝ち事ができた。この成績に満足していないので、次の大会では更に上を目指したい。先月のアメリカ遠征とは違うタイプの選手が多く、練習や試合をできたことは大変良い経験となった」と遠征を振り返った
(右写真、吉本コーチ撮影)

 
フリースタイル・吉本收コーチ(神奈川大職)の話「これまでの遠征は、1試合やって負けて帰ってきた、という選手もいた。今回は合宿での練習と練習試合があり、その反省を生かして試合に出場できるなど、実りある遠征だった。経験を積むべき学生の遠征は、合宿をつけた方がいいと思う」

 
グレコローマン・馬渕賢治コーチ(中京学院大職)の話「ヨーロッパ独特の投げ技主体のグレコローマンを経験できた。ブルガリアのコーチから聞いたことだが、ブルガリアでは小学生からグレコローマンをやり、中学・高校になってフリースタイルに転向するのが一般的という。20歳前後でグレコローマンを本格的に始める日本は、この10年の差をどう埋めていくか。コーチの口からは松本(慎吾)、笹本(睦)、長谷川(恒平)といった名前も出てきて、短期間で世界レベルにまで実力をつける日本のグレコローマンが評価されている面もある。今回、銅メダルを2つ取ったことを次につなげたい」


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