世界で通じる軽量級の実力を証明…男子の米国遠征チームが帰国【2010年2月9日】



 米国コロラドスプリングズへ合宿と試合出場に行っていた男子両スタイルの全日本チームが2月8日、成田着の全日空機で帰国した。グレコローマンの団体戦「キット・カールソン・カップ」は3勝1敗で2位、「デーブ・シュルツ記念国際大会」はグレコローマンで「銀1(60kg級・松本隆太郎=群馬ヤクルト販売)、銅1(55kg級・長谷川恒平=福一漁業)」、フリースタイルで「金1(55kg級・湯元進一=自衛隊)」という成績だった。

 佐藤満強化委員長(専大教)は「アメリカ以外の国の選手も参加しており、いろんな経験ができて、選手にとってはいい遠征になったと思う」と、移動日を含めて2週間という遠征を総括。「前半から攻め続けることの必要性を各選手がしっかり感じてくれたと思う」と期待し、「今回の経験を2月の合宿で生かし、3月の遠征に臨んでくれると思う」と要望した。

 メダルを取った選手は両スタイルとも55kg級と60kg級。アジア・チャンピオンを破っての優勝(湯元進一)など軽量級の踏ん張りには満足そう。先月末のロシアで行われた「ヤリギン国際大会」に参加した米国チームのジ―ク・ジョーンズ監督からも「日本の軽量級はすばらしい」と言われたそうで、「だれが出てもメダルを取れる、という状況になった」と、層が厚くなったことを感じた様子。「ロンドン五輪までには、(世界選手権の)メダルに確実に手が届くようになる」と予測した(右写真=成田空港で選手をねぎらい、今後を期待する佐藤強化委員長)

 フリースタイル60kg級はメダルを取れなかった。しかし湯元健一(ALSOK綜合警備保障)は久々の国際大会ということで試合運びをミスしたものであり、石田智嗣(早大)もケアレスミスによるもの。経験を積んでいけば克服できる課題であり、「両者とも決勝に残る実力はある」と分析した。

 一方で、重量級は大会で結果を出すことができなかった。欧州の選手はあまり攻撃をしてこないタイプが多いのに対し、米国選手は積極的に動いてきてスタミナもあるので、現状では厳しいことは予想していたという。

 だからこそ、あえて米国に連れて行った。「実力差を感じてくれたと思う。軽量級の2倍、3倍の練習をしなければ追いつかない。そのことを実感してくれればいい」と、今後の奮起を求めた。今年は重量級だけの合宿が何度か予定されており、アジア大会(11月・中国)に重量級派遣カットとならないよう、全力を挙げて強化に取り組みたいという。

■ライバルのロシアでの活躍に、「こんなところでは負けていられない」…湯元進一

 「デーブ・シュルツ国際大会」で、チームで唯一金メダルを持ち帰った湯元進一は、全日本選手権で高校生選手(森下史崇=茨城・霞ヶ浦高)に敗れた汚名を返上した形。「本来なら遠征に連れて行ってもらえる資格はない。選んでくれた佐藤強化委員長に感謝したい」と話し、期待に応えられたことでホッとした表情。「プレッシャーもなく、今の自分の実力を出せたかな、と思います」と言う。

 ロシアでの「ヤリギン国際大会」で、同級の田岡秀規(自衛隊)と稲葉泰弘(警視庁)が上位入賞した情報は入ってきていた。「こんなところで負けてはいられない」という気持ちで臨んだそうで、ライバルの活躍に刺激されての金メダル獲得。昨年も最初の大会出場となった「ヤシャ・ドク国際大会」で優勝し、世界選手権出場へつなげた。今回の好スタートで昨年の再現を狙いたいところ。

 決勝では昨年のアジア王者であり、五輪に2度出場している韓国選手を破った。しかし、「全体のレベルは他の階級に比べると高くはなかった」とのことで、この優勝がそのまま世界選手権などで通じるものではないことは十分に感じている。「こらからです」と表情を引き締めた(左写真=メダル獲得の選手。左から松本、湯元、長谷川)

 銀メダルを取った松本隆太郎は「他の選手は5試合、6試合やったのに対し、自分は3試合しかできなかった」と、試合数は物足りなかった様子。しかしアテネ五輪王者と闘うことができたり、大会前の合宿で「かなり強い」と思っていた中国選手に勝つことができたなど、収穫のあった遠征だったと振り返る。五輪王者の鄭智鉉とは「根本的に違った」と、現段階では実力差を感じたようだが、「スタンドの攻防など、闘える部分は見えてきた」と、手ごたえは感じたという。

 「キット・カールソン・カップ」では、総合格闘技からレスリングに復帰した2006年世界王者のジョー・ウォーレン(米国)とも闘い、快勝している。「まだ(レスリングの)練習が足りていないみたいでした。苦手なタイプではないので、(ウォーレンが力を戻しても)十分に勝てる相手です」と自信を見せた。

 銅メダルの長谷川恒平は、2回戦で昨年2月の「ニコラ・ペトロフ国際大会」で勝っていた相手に敗れたのが響いての3位。敗者復活戦を勝ち上がっての3位決定戦ではその選手と再戦となり(注=米国式の敗者復活戦方式のため)フォールで勝って雪辱した。「世界選手権は一発方式。勝てる相手には必ず勝たないとならない」と、反省のあった銅メダルだった。

 しかし敗者復活戦にまわったことで6試合をやることになり、より多くの試合数をこなすことができた。「世界選手権でも、(優勝するためには)今回以上のレベルの選手の中で5、6試合は闘うことになる。いい経験でした」と言う。

 3月初めの「ハンガリーカップ」は、昨年優勝している縁起のいい大会。「結果を追求して世界選手権へつなげたい」と、今度こそは金色のメダルを目指すことを誓った。


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