【特集】多発のアクシデントを乗り越えて霞ヶ浦が関東制覇…関東高校選抜大会
【2010年1月30日】

文=増渕由気子


霞ヶ浦高校の坂本

 正田杯関東高校選抜大会は1月30日、神奈川・逗子アリーナで学校対抗戦が行われ、霞ヶ浦(茨城)が2年連続25度目の優勝を果たした。

 昨年の全国選抜大会、インターハイの団体は、50kg級〜66kg級まで無敗という鉄壁軽量級がチームを支えた。そのメンバーが抜け、残った昨年のレギュラーは、74s級の坂本悠太(同級国体王者=写真)と84s級の松野裕也、120s級の前川勝利(グレコローマン120s級国体王者)の3人。今年は「重量級に回せば必ず勝てる」という布陣になるはずだった。

 だが、大沢友博監督には、新チームの未知数という不安以前の問題が襲い掛かる。正月が終わり、いよいよ同大会に向けて調整段階に入った時点で、体調不良者やけが人が続出。同監督は、「団体戦に出られる状態ではなかった」と吐露した。致命的だったのが、120s級の前川が最も重症だったこと。「大将の前川に回せば、最悪4−3で勝てる」という目算が崩れ、目標を“優勝”から3月の全国選抜大会出場に切り替えたほどだ。

 2回戦が事実上の決勝戦だった。相手の埼玉・花咲徳栄は、2年前のチャンピオンで、それ以降、何度となく雌雄を決してきたライバル。霞ヶ浦は、50s級の小宮佑介、55s級の朝比奈健人と連勝でスタートさせるが、60s級の古谷和樹、66s級の井出倫太郎が連敗。2−2で国体王者の坂本悠太にまわった。

 「オレがなんとかしなければならないんだ」。開始早々から、攻め立てて相手をコントロールすると、すかさず腕を取ってわずか1分6秒でフォール勝ち。五分だった流れを完全に霞ヶ浦に引き寄せる1勝を奪った。それが功を奏し、その流れに乗った84s級の松野雄也は、2ピリオドともにテクニカルフォールで完勝。満身創痍の前川に勝負を回さず、総合力で花咲徳栄を下した。

 ヤマ場を抜けた準決勝、決勝は前川の途中棄権を除けば、無敗という圧勝で終え、25回目の栄冠を勝ち取った。だが、最終日の個人対抗戦は坂本と前川の二人が優勝するものの、伝統ある軽量級で決勝進出者がゼロというやや寂しい結果も出てしまった。

 昨年の個人戦は5階級を制し、「09年は四冠を取ります」と声高らかに宣言した大沢監督だったが、個人戦が終了すると、厳しい表情でミーティングをする姿があった。今年の全国制覇の道はいばらの道なのだろうか…。だが、大沢監督はしっかりと3月の全国選抜の連覇に照準を見定めている。

 不安定だった軽量級の結果は、「練習どおりの力が出せてなかった」と力不足ではなく経験不足が敗因だ。「うちはたった2、3ヶ月で変わるチームだからね。2ヵ月後(3月の全国選抜)の霞ヶ浦を見ていてください」と大沢監督。“大沢マジック2010”が今年も始まる。


◎霞ヶ浦の学校対抗戦成績

 ▼1回戦
霞ヶ浦(茨城)○[7−0]●足利工(栃木)

 ▼2回戦 
霞ヶ浦(茨城)○[4−3]●花咲徳栄(埼玉)

 ▼準決勝
霞ヶ浦(茨城)○[7−0]●韮崎工(山梨)

 ▼決勝
霞ヶ浦(茨城)○[6−1]●足利工大附(栃木)