男子全日本チームがロシアと米国へ向けて出発【2010年1月27日】



 男子の全日本チームが1月26日、ロシアと米国へ向けて出発した。フリースタイル軽量級の全日本1、2位選手が参加するロシア組はゴールデンGP予選大会「ヤリギン国際大会」(1月29〜31日、クラスノヤルスク)に出場、両スタイルの選手が参加する米国組は合宿と「デーブ・シュルツ記念国際大会」(コロラドスプリングズ)に出場する。

 アエロフロート航空で先に出発したのはロシア組。「ヤリギン国際大会」はロシアほか旧ソ連の一線級の選手が出場することで有名な大会であり、一筋縄ではいかない闘いになるとなることが予想されるが、田南部力コーチ(警視庁)は「大会出場だけの遠征。試合だけに集中できるので、結果を求めます」ときっぱり。合宿のある遠征なら、結果もさることながら内容が大事となるが、試合出場だけなので体重調整からしっかりやらせ、どの選手も上位を狙わせるという。

 1995年には和田貴広・現国士舘大コーチが出場して優勝し、世界への飛躍の基礎をつくった大会だが、最近は出場することがなかった。そのためロシアで試合に出場するのは初めてという選手が多い。田南部コーチは「やはり、ロシアでレスリングを経験しなければ」と話す。どの国も北京五輪後に休養していた選手が戦線に戻り始めている。「ロンドン五輪へ向けての各国の戦力を知る機会にもなる。貴重な経験になると思う」と位置づけた。

 2001年に全日本チームが出場しているが、その年は7月開催だった。最高気温がマイナス25〜30度というこの時期の大会参加は1997年以来。寒さの中で体調を整える難しさも必要となってくるが、「すべては経験です」と言う。

 成田空港での出発前には、1日早く行った女子チームが新装なったモスクワのシェルメンチボ空港で右往左往したとの情報が入ってきた。国際線と国内線の空港間を結ぶ無料シャトルバスがあるはずだったが、よく分からず、時間ほかの関係でタクシー利用へ。支払った料金は1台あたり3000ルーブル(約9000円)。しかしすぐ近くのターミナルに行くのに、これだけかかるはずもなく、相場の3倍以上の料金だったらしい。クラスノヤルスクに到着すると、大会まで日があるせいかロシア協会の役員はだれもおらず、ホテルへのチェックインなどの諸手続のため、神経をつかって疲れが残る移動となった。

 その情報もあり、この日は出発にあたって旅行代理店のスタッフが通りかかったアエロフロート航空のキャビンアテンダントにいろいろ聞いてくれ、かなりの予備知識を得ることができた。田南部コーチは「先陣がいてくれて助かった。ボクたちは(トラブルを回避でき)試合に集中できますね」と余裕の表情を浮かべてゲートをくぐった。

 夕刻に全日空で出発した米国組は、標高1500メートルのコロラドスプリングズで米国チームほかとの合宿から入る。佐藤満監督(専大教)は「合宿と試合出場の両方とも重要。合宿の最初の3、4日は徹底的に追い込んで練習してほしい。それによって高地に体が慣れてくる。練習相手(米国ほか)は調整練習のつもりであっても、こちらは追い込む練習をやらせる」と話し、まず合宿で実力アップをはかり、その後の試合で「今の自分の実力を見極めてほしい」と要望する。

 19選手という大所帯での遠征。「まず、いろんな選手に国際舞台で闘うチャンスを与えた」とのことで、結果を出せなければ次はないことも示唆。サバイバル遠征という厳しさで、選手を追い込んでいく腹積もり。

 伊藤広道コーチ(自衛隊)は、2003年の全日本チームによる米国遠征の際、初の全日本チーム参加だった豊田雅俊選手(警視庁=現全日本コーチ)が世界2位の選手を破って一気に実力を伸ばし、注目された例を出し、海外遠征の経験の少ない選手にとっての飛躍の遠征になってほしいと注文。合宿ではいろんな選手と積極的に練習することを望んだ。

 遠征メンバーは下記の通り。


 ◎ロシア遠征

 【コーチ】田南部力(警視庁)、井上謙二(自衛隊)

 【トレーナー】竹内博昭(ハンズコーポレーション)

 【帯同審判】篠原正樹(静岡・沼津城北高教)

 【選手】

   ▼55kg級 稲葉泰弘(警視庁)、田岡秀規(自衛隊)

   ▼60kg級 小田裕之(国士舘大)、高塚紀行(日大コーチ)

   ▼66kg級 池松和彦(福岡大助手)、佐藤吏(ALSOK綜合警備保障)

   ▼74kg級 長島和幸(クリナップ)、高橋龍太(自衛隊)

◎米国遠征

 【監督】佐藤満(専大教)

 【コーチ】伊藤広道(自衛隊)、久木留毅(専大教)

 【トレーナー】川崎淳(ハンズコーポレーション)

 【帯同審判】酒井久治(山梨学院大職)

 【グレコローマン選手】

  ▼55kg級 長谷川恒平(福一漁業)、峯村亮(神奈川大職)

  ▼60kg級 松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)、笹本睦(ALSOK綜合警備保障)

  ▼66kg級 岡本佑士(拓大)

  ▼74kg級 鶴巻宰(自衛隊)

  ▼84kg級 斎川哲克(両毛ヤクルト販売)、天野雅之(中大)

  ▼96kg級 北村克哉(FEG)

  ▼120kg級 新庄寛和(自衛隊)

 【フリースタイル選手】

  ▼55kg級 湯元進一(自衛隊)

  ▼60kg級 湯元健一(ALSOK綜合警備保障)、石田智嗣(早大)

  ▼66kg級 森川一樹(山梨学院大)、藤本浩平(警視庁)

  ▼74kg級 (派遣なし)

  ▼84kg級 松本真也(警視庁)

  ▼96kg級 磯川孝生(徳山大職)

  ▼120kg級 下中隆広(国士舘大大学院)、荒木田進謙(専大)

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