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【特集】東日本学生リーグ戦展望(2)…早大に続く“古豪復活”を目指す中大
【2011年5月14日】

(文・撮影=増渕由気子)




 戦後の復興時代に関東(現東日本)学生リーグ戦で5連覇を成し遂げ、過去10度の優勝を誇る中大。1960年ローマ五輪での16階級中7選手を含め、19人もの五輪代表、そして5人の金メダリストも輩出し(いずれもOBを含む)、戦後の日本レスリングを支えた大学のひとつだ。

 1972年以降、優勝は途切れ、古豪のイメージが強くなってしまったが、2年前(2009年)に中大は大きな転換期を迎えた。当時大学3年だった74kg級の中井伸一と84kg級の天野雅之がそろって全日本大学グレコローマン選手権で優勝し、学校対抗戦で拓大に続く2位に入る過去最高の成績をおさめた。東日本学生リーグ戦でも2009・10年にグループ4位と上位に進出した。

■二枚看板は抜けたが、力強いコーチのもとで団結

 今年は中井、天野の2人が卒業し、曽根田昌弘監督は「ちょっと我慢の年かな」と腹をくくるが、その表情は明るい。高校での実績がある選手が軽量級から重量級まで幅広くそろい、戦力は確実に増している。加えて、一昨年・昨年と国体2連覇を達成し、4月の全日本選抜選手権では悲願の優勝を遂げた天野が中大職員となり、部のコーチに就任。これまで力を入れられなかった平日の学生強化に本格的に取り組める環境が整った。

 昨年、黎明期に日本のレスリング界を支えた早大が62年ぶりにリーグ戦優勝を遂げ、「次は中大の番」と飛田義治顧問らOBの期待も高まるばかりだ。
(左写真=古豪復活に向けて練習する中大)

 曽根田監督は勤務の関係で土日しか練習を見られないため、その分、技術的な指導は天野が一手に引き受ける。全日本合宿にも参加している天野コーチがナショナルコーチ直伝の技を習得し、学生にくまなく伝授している状況。「全日本合宿は本当にためになるし、毎回楽しみ」とどん欲に上を目指す天野だからこそ、指導にも熱い情熱を注いでいる。

■重量級から軽量級勝負へ

 今年の主将は55kg級の高ノ山翼。「絶対的なポイントゲッターがいないので、自分と60kg級の大谷(健輔)の4年生コンビで流れを作りたい」と抱負を語る。大谷も「まずは下2つとって、後輩に安心させた試合展開をつくりたい」と話した。網野高出身で、チームでずば抜けた体力を持つ大谷は、自ら「減量後の戻し方がうまくいかず、立ち上がりがうまくいかない」と分析ように、試合へ向けたの調整が課題だ。今年の中大は、昨年までの中井、天野の二枚看板に代わり、軽量級コンビで勝負に出る腹積もりだ。

 そして、66kg級の塚本貴明が前半戦を締めくくる。後半戦はJOC杯74kg級で北村公平(早大)を破って決勝に進出した森達也、東日本学生秋季新人戦96kg級2位の平川翔次など2、3年生主体のメンバーで臨む。最後は4年生の120kg級・齋藤和也が構える。55、66、120など主要階級に4年生を配置できることがチームの強みとなるだろう。
(右写真=左から塚本、高ノ山、大谷の各選手)

 高ノ山主将は、「目標は優勝ですけど、最低限(チームで)5勝はしたい。そして去年よりひとつ順位を上げたいです」と語れば、大谷も「天野先輩が残ってくれて、励みになります。中大のいいところは団結力なので、それを生かして最低でもグループ3位になりたい」と話した。

 早大に続く、古豪復活の足音は聞こえてくるか−。



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