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【特集】東日本学生リーグ戦展望(3)…リーグ戦の大穴・国士舘大
【2011年5月15日】

(文・撮影=増渕由気子)




 世界チャンピオンを3人(荒井政雄、伊達治一郎、朝倉利夫=後述)育てた闘将・滝山将剛部長、男子フリースタイルの世界選手権最後の王者、朝倉利夫監督(1981年52kg級)、2008年北京五輪まで専任コーチとしてナショナルチームを支えた和田貴広コーチ(1995年世界選手権男子フリースタイル62kg級2位)と豪華な布陣の指導陣。それが国士舘大だ。

 昨年11月の広州アジア大会では、男子グレコローマン74s級に鶴巻宰(自衛隊)、120s級に新庄寛和(自衛隊)のOBに加え、現役学生の小田裕之が男子フリースタイル60s級に出場。鶴巻と小田が銀メダルを獲得し、“国士舘大”の存在が一段と高まった。

 現役選手の層も厚く、東日本学生リーグ戦の一部チームの中で、唯一60名の部員を誇るマンモスチームだ。昨年のエース小田が抜けるメンバーとなるが、84s級の嶋田裕大主将を中心に、ルーキーから4年までそれぞれの学年にキーマンがいるバランスのとれたチームに仕上りそうだ。

■ケガに泣いた3年間の悔しさを晴らす! 55s級の利部裕

 小田に代わって軽量級の核となるのが55s級の利部裕(2009年JOC杯2位)だ。朝倉監督が「けがに泣くことが多い」と指摘するように、タイトルを射程圏内にとらえるものの、実力を出し切れない試合が続いた。

 利部は「誰にでもけがはあると思う。それは一緒なのでやるしかない。けがで負けていたというより、気持ちの問題でもありました」と、過去の自分を客観視。昨年の55s級学生王者の半田守(専大)やJOCジュニア王者の矢後匡平(日大)の名を挙げ、「どちらにも勝ったことがある。4年としての意地で下の学年には負けられない」と勝利への執念を燃やした。

 国士舘大の新しい看板階級は74s級になるだろう。JOC杯ジュニアオリンピックのフリースタイル74s級は2年連続で国士館勢が優勝している。昨年は倨V(からむしざわ)謙(3年)が、今年は嶋田主将の弟・育大(1年)が勝ち抜いた。ともに「リーグ戦の目標は優勝です」と声をそろえる。

 特に嶋田育は「和田さんの技術指導は高校とレベルが違いすぎる」と、高度な技術指導を喜び日々進化中だ。マット上での練習以外でも、タイヤ引き
(左写真)などハードな練習を重ねて基礎体力がアップ。「倨V先輩に負けないように」と、同門で競い合いながら国士舘大のレベルを上げていく予定だ。

■悲願の優勝へ、国士舘大が足りないもの−

 嶋田主将は利部、倨V、嶋田育の活躍を見込み、「チームとしては先手必勝で行き、84s級の自分で勝負を決めたい」と、前半戦74s級まで最低3勝で進め、自らの勝利でチームの勝利を決める腹積もり。計算どおり進まなくても、頼もしいルーキーがもう一人いる。強豪・霞ヶ浦から入った96s級の坂本悠太だ。

 高校時代はインターハイ74s級で優勝し、大学入学と同時に階級を2階級アップした。猛練習でならす霞ヶ浦高出身の坂本の口から「国士舘大の練習はきつい」とつい本音が出るほどハードでいい練習を積み、実力は急上昇。スパーリングでは、元74s級のスピードを生かして3点タックルを連発。「重量級(のレギュラー)を任されたら、無敗で先輩たちをサポートしたい」と抱負を語った。
(右写真=左から利部、嶋田育、島田主将、坂本、倨V)

 一部リーグ最多の約60人の部員がいるだけに、駒は十分。嶋田主将にそれ以外に必要なものを聞くと、「リーグ戦のレギュラーだけが勝つ気でいるだけでなく、全員が同じ気持ちでいなければいけない」と核心を突くコメント。指導陣、レギュラーたちの気運は高まってきた。あとは控え選手を含めチーム一丸となって優勝を本気で狙いにいくだけ。それができれば、1975年以来の優勝も夢ではない。



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