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【特集】幼なじみの成國大志(東京・東深沢)と加賀田葵夏(東京・高南)が3連覇へ王手
【2011年6月13日】

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)




 キッズクラブの強豪「GOLD KID'S」所属の男子42kg級の成國大志(東京・東深沢)と女子41kg級の加賀田葵夏(東京・高南)が、2年生で大会2連覇を達成。来年は3連覇候補となった。3連覇の記録に複数の候補選手が出るのは初となる。成國の母の成國晶子代表が「同じ保育園の幼馴染」と話すように、常に身近な存在でしのぎを削ってきた仲間が、ともに3連覇へのステップを踏んだ(右写真=2選手と成國代表)

 昨年は成國、加賀田ともに男女の最軽量級で1年生チャンピオンになった。快挙には変わりないが、最軽量級の1年生王者は珍しくない。今回は、ともに階級を上げて挑んだ。

■震災ボランティアを通して強くなった成國

 成國は昨年の優勝から1年間、順風満帆のチャンピオン生活ではなかった。準決勝の清水洸希(石川・野々市)、決勝の藤田雄大(三重・光陵)には、この春の地方大会で黒星を喫し、成國は「親からも『負け癖がついたね』と言われた」と振り返る。そのため、「今回は、この2人を倒すことを意識していた」と、春遠征の反省を生かした闘いを心がけた。まずはこの2ヶ月、走り込みをしっかり行い、高かった構えを矯正。練習もこの大会にかけてしっかりと照準を合わせてきた。

 成國代表は「男子は女子と違って4月のジュニアクイーンズカップやJOC杯(ジュニアオリンピック)の試合がないため、いかに全中までに地方大会で試合経験を積ませるかがカギなんです。負けてしまっても、そこで選手の情報が手に入れられる。全中前の地方大会で負けたことは無駄ではないんです」と、計算どおりの様子。

 藤田との決勝は第1ピリオドをクリンチで奪い、2連覇をぐっと引き寄せる。だが、藤田も3年の意地を見せ、第2ピリオドの中盤、うまく投げからの攻撃で2−1とし、さらに成國のバックを奪おうとした。一瞬、藤田のパワーにねじこめられそうになった成國だが、「相手を高校生の先輩だと仮想した。高校生に失点するのは仕方がないこと。そう思ったら、力が出てきました」と、冷静に藤田の技をかわして、逆に押さえ込んで勝負を決めた。
(左写真=決勝で闘う成國)

 負けこんだ春遠征の直後、成國は岩手県山田町の被災地に復興支援活動に出向いた。「山田町の子供たちは、(被災して大変なのに)純粋にレスリングが楽しそうだった。その笑顔で、こっちも頑張ろうと勇気付けられたんです」−。心技体ともに2ヶ月で大きく成長した成國が、年で一番大事な大会で再び頂点に立った。来年は、いよいよ夢の3連覇に期待がかかる。

 今大会は目の前で、藤波勇飛が3連覇を決めて見せた。「来年のいい参考になった。秋の選抜大会も含めて僕は六冠、狙いたいです」とキッパリ宣言した。

■宿敵のライバルから会心のフォール勝ち

 加賀田VS谷山菜緒(大阪・寝屋川六)は、成國代表が「小学校時代を入れたら、今年で4年連続全国の決勝」と話すように、キッズ・レスリング時代からライバル関係が続いている。昨年も壮絶な接線を繰り広げて、加賀田が1年生チャンピオンになった。

 第1、2ピリオドともに谷山が先制点を奪うが、ここからが加賀田の見せどころ。成國代表が「ポイントを取られても、ひるむことなく、残り30秒で必ずポイントを取り返す根性があるので、安心して見ていられる」と分析するように、その後3点を取り返し、第2ピリオドでは3点を奪った後にフォールした。
(右写真=決勝で闘う加賀田)

 加賀田は「1点取られて悔しかったけど、フォールできてよかった」と笑顔を見せたが、すぐさま「本当はポイントを取られたくないので、来年は点を取られないようにして、三連覇目指します」と課題を克服することを誓った。



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