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【特集】創部5年目で初の全国大会出場…新潟・巻っずクラブ
【2011年8月1日】

(文=樋口郁夫)




 1988年以来、23年ぶりに新潟市で開催された全国少年少女選手権。地元の新潟県から、「巻っずクラブ」が創部5年目にして初の全国大会を果たし、銀1・銅2の結果を出した。(右写真)

 代表は1998年の世界女子選手権に出場し(7位)、97・99年の2度アジア・チャンピオンにもなっている本名亜里さん(旧姓鈴木=日大卒)。夫で学生王者だった栄仁さん(日体大卒)のバックアップを受けつつ、全国大会出場を果たすまでにチームを成長させた。

 地方予選があるわけではないレスリングの全国大会だが、相応の実力がないチームや選手で全国大会出場というのは無謀な時代。「最初の2年くらいは、レスリングとはいえない状況」だったそうで、北信越や関東で行われる大会に出場して実力を磨き、地元開催ということもあって、やっと「出よう」という気持ちになったという。

 「今回で全国のレベルが分かった。今のウチのレベルでは、みんなよくやったと思います。レスリングの試合をやってくれました」と振り返る。ただ、選手たちは、やはり「全国大会」ということに緊張していたようで、これまでの大会とは臨むにあたっての様子が違っていたという。

■遠征になるが、今後は毎年全国大会出場の予定

 指導方針の根本は「練習でやったことを試合で出せるように」。練習でできないことを、試合では求めない。「練習でやったことを出せるようになれば、勝利につながっていくと思います。あと、勝つ気持ちを出してれること。負けても、勝つ気持ちを強く持って闘ってくれれば褒めます」と言う。

 女性の代表ということも、「巻っずの売りかな」と言う。「子供たちには、女性特有の優しさが必要な時もあると思います」と、厳しさの中にも優しさで包む母親のような立場で選手に接している。それが部員33人という大所帯を維持している要因かもしれない。
(左写真=セコンドに夫の栄仁さん、左端に本名代表)

 全国大会出場を果たしたことで、「それぞれの選手に目標ができたでしょうし、来年からは遠征になりますけど、毎年出ていきたい」と言う。出る以上は優勝選手輩出が目標。「一段ずつ上がって、何年かかるか分からないけど、全国チャンピオンになる選手を育てていきたいです」と言う。

■新潟県民として、「県の発展に貢献できるよう頑張りたい」

 このクラブから高校へ巣立っていった選手は女子が1人いるだけだが、今後はそうした選手が多く出てくるだろう。本名さんは東京生まれで、結婚によって新潟県民となった。新潟県が、かつては日本有数のレスリング王国だったことは聞いて知っているが、具体的にはピンとこない。それでも、「新潟県民となった以上、新潟県のレスリングの発展に貢献できるように頑張りたい」と言う。

 日大と日体大は、1980年代から90年代、大学レスリング界の覇権を争った間柄。常勝の日体大に真っ向から闘いを挑んだ数少ない大学が日大だった。その“ライバル関係”を乗り越えた唯一の夫婦の間には3人の子供(男、男、女)がいて、間もなく4人目が生まれる。

 将来は、もちろん本人の意思が最優先だが、「レスリングでオリンピックに行ってくれればなあ」という希望。次男は吉田沙保里選手のCMを見てあこがれ、レスリングの道にのめりこみそうだという。
(右写真=地元のテレビ局から取材を受ける)

 チームの発展とともに、子供の成長も楽しみな本名さん。まだ数が少ない女性指導者の励みとなるような活動が期待される。



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