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【特集】愛媛県にレスリングを根付かせ、全国大会出場を継続…愛媛・今治少年クラブ
【2011年8月2日】

(文=樋口郁夫)




 愛媛県は、2008年北京五輪までの数年間の日本のレスリング界を支えた松本慎吾・現日体大監督の出身地。最近では高校の全国王者も生まれており、現在では“レスリング後進県”という人はいないだろう。しかし、県のレスリング協会ができたのは30年前のこと。その後、1997年まで県内にレスリング部のある高校が1校もないという“レスリング不毛県”だった。

 30年前、県協会のスタートと同時に今治少年クラブをつくったのが門田富和代表。28回を数えた全国大会にフル出場するなど、同県にレスリングを根付かせることに尽力。現在の愛媛県レスリング界の繁栄の基盤をつくった指導者だ。
(右写真=セコンドから選手を見守る門田代表)

 「もう60歳になりましたよ(笑)。高校の全国王者が生まれるなど、やっとここまで来たな、という感じです。6年後に愛媛で国体が開かれる予定で、それに向けて高校の指導者も燃えています」と話し、孤軍奮闘していた時代と様変わりした状況に満足そう。五輪選手の誕生と国体が近いということで、新聞やテレビでレスリングが扱われることが多くなり、関心も高くなっているという。

■県内で育った若い指導者をバックアップしていきたい

 1984年の茨城・高萩市で行われた第1回全国大会に参加している数少ない指導者だ。「あの頃に比べると、全国大会のレベルは格段に上がりましたね」と話し、「週2、3回の練習のチームの選手では勝てない時代ですね」と言う。勝つためには週5、6回の練習も必要となってくるが、「仕事も関係もあるので、それはとてもできません」と言う。

 また、そうしたハードトレーニングによって燃え尽き症候群を生むなどの弊害が指摘されているのも事実。どちらがキッズ・レスリングの正しい姿なのかは、30年の指導歴を持つ門田代表をしても、「よく分からない」と言い、「それぞれの指導者の方針、考え方がありますからね」と話す。

 どんな形でも、レスリングを発展させたち気持ちには変わりはない。県内にキッズは3チーム、高校も3チームしかなく、関東や関西に比べると底辺は狭い。「キッズをもっと発展させたい」と、普及活動は今後も続けていく。かつては中学生、高校生の指導も手掛けたが、指導者が育ったこともあって現在は小学生に絞っての指導。県内の活動では限界があるので、中国地方や関西の大会に積極的に出かけ、実力アップ目指している。

 「もう歳ですからね」と繰り返しつつ、「愛媛で育った選手が指導者となっている。若い指導者に頑張ってもらい、バックアップしていきたい」と、愛媛県レスリング界の発展を目指す気持ちは衰えていない。



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