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【特集】下馬評を覆して霞ヶ浦(茨城)が本命・花咲徳栄(埼玉)に4−3で勝利!
【2011年8月3日】

(文・撮影=池田安佑美)




 インターハイ学校対抗戦で優勝したのは、30回目の出場を果たした霞ヶ浦(茨城)だった。優勝が決まった瞬間、大沢友博監督は、4勝目を挙げた長知宏と涙の抱擁!(右写真) 「このチームで勝ててしまった。本当に子供たち、すごいね」とうなった。

 「4年連続22度目の優勝」という結果から見れば、優勝は当然のように見えるが、今年の霞ヶ浦の下馬評は決して高くなかった。昨年は「タレント不在」と言われながらも、重量級3階級に全国チャンピオンを備えていたが、今季は2月の関東高校選抜大会で花咲徳栄に2−5で敗れ、個人戦ではまさかの優勝者なし。

 6月の関東高校大会では、60s級の古谷和樹主将しか優勝せず、学校別対抗得点でも大差で花咲徳栄の後じんを拝した。本当にスターがいない…。4年ぶりの王座陥落となるのか―。メンバーに緊張が走った。

 花咲徳栄が霞ヶ浦に2連勝したことで、「今年の霞ヶ浦はそこまで強くない」という声は全国に広がっていた。その評価は古谷和樹主将をはじめ、選手の耳に届く。古谷主将が「コンチクショー! って思いましたが、日本一をあきらめることは決してしませんでした」と振り返るように、霞ヶ浦メンバーはこの風評で一致団結した。いつも以上に結束力が強まったのは、メンバーたちの意地と、大沢監督の一つの教えだった。

 インターハイの仕上げに入った7月下旬、女子サッカーのなでしこジャパンのワールドカップ優勝で、霞ヶ浦に追い風が吹いた。大沢監督は、「スター選手も澤選手しかいない中、(海外の体格のいい)大きい相手と戦い、結束力で粘って、1つ1つ勝って優勝した、なでしこジャパンの話をしたんです」と振り返る。

 過去21回も全国制覇をしている大沢友博監督ならではの指導力で、“力が足りない”と評されるノンタレントチームを、ノーマークから世界制覇した「なでしこジャパン」を意識させ、インターハイに臨んできた。

■ルーキー樋口の大車輪の活躍に、重量級の長が驚異的な成長みせる

 関東高校王者で、昨年もレギュラーだった古谷主将は確実なポイントゲッターだったが、3月の全国高校選抜大会が震災で中止となったため、他のメンバーの実力が未知数だった。その中で、霞ヶ浦ブランドにふさわしい活躍をしたのが、55s級の樋口黎と84s級の長知宏だ。

 樋口はルーキーながら全勝。長はヤマ場の秋田商(秋田)と決勝で殊勲の白星を挙げた。大会MVPは古谷和樹主将に選ばれたが、「樋口と長が頑張った」と下級生のねばりに大沢監督もご満悦。また、74s級の山下の“粘り”も忘れてはならない。秋田商との準々決勝から、全試合1ピリオドを落としてからの逆転勝ちか、ストレートでもラストポイントで追いついての勝利と、執念を見せてくれた。

 一昨年秋の全国20回制覇の記念祝賀会で、大沢監督は「25回は全国制覇したい」と目標を掲げていた。すでに、22回の優勝をとげ、目標まであと3勝となった。「このまま、定年まで頑張っちゃおうかな」。ノンタレント軍団をわずか数ヶ月で全国の頂点に仕上げた大沢監督の挑戦はまだまだ続く―。



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