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【特集】目標は母子での日本一、そしてオリンピック…52kg級・川井梨紗子(愛知・至学館)
【2011年8月18日】

(文=樋口郁夫)




 全国高校女子選手権には、出発を間近に控えた世界カデット選手権(8月23〜28日、ハンガリー)の代表選手3人も出場。2選手は決勝で敗れたが、52kg級の川井梨紗子(愛知・至学館)が見事に優勝し、気分をよくして世界での闘いに挑むことになった。(右写真=決勝でもフォール勝ちの川井)

 1回戦から危なげない試合が続き、終わってみれば4試合フォール勝ち。総得失点は31−0の圧勝優勝で、「うれしいです。最近練習でやってきたことを出すことができました」と振り返った。練習でやってきたこととは、攻め続けることと、自分がポイントを取ったあとの対処(さらなる攻撃)。守ることなく執拗に攻める気持ちが、優勝を引きよせたようだ。

 世界カデット選手権へ向けて最高のコンディションをつくるため、この大会は棄権してもおかしくない日程だった。しかし「ここで優勝して弾みをつけようと思った。ここで優勝できなければ、世界で優勝できるはずがないので頑張りました」と、コンディションづくりより実戦経験と勢いをつけるために出場することを決め、その通りになった。世界での闘いも期待がもてそうだ。

 2009年の全国中学生選手権41kg級で優勝し、最強の女子軍団へ進んだ。昨年はJOC杯やこの大会では優勝を逃したものの、クイーンズカップ・カデットで優勝。今年もクイーンズカップ・カデットで優勝し、全日本選抜選手権(51kg級)では3位入賞と力をつけ、この大会では頭ひとつ抜け出ている実力を見せた。その要因を問われると、「(栄和人)監督の指導がいいことと、遠く離れていても(石川県にいる)母が頻繁に連絡をとってくれ、励ましてくれることです」と話し、支えてくれる母への感謝の気持ちを話した。

■中学の全国一で、目が世界へ向いた

 母とは、1989年全日本女子選手権53kg級チャンピオンの川井(旧姓小滝)初江さん。「昔はなかなか勝てなかった子なんです」とキッズ時代を振り返り、「試合で練習通りにやらなかった時や、攻めなかったり、途中で試合をあきらめたりした時は厳しくしました」と言う。

 「中学で全国チャンピオンになった時に、気持ちが変わったみたいです」と振り返り、全国一が世界への気持ちを芽生えさせてくれたようだと分析した。自身の選手時代には至学館高の栄監督もまだバリバリの現役選手で、当時から面識はあった。しかし、至学館高進学を強制したのではなく、「自分から厳しい世界を選んだ」という。今は、世界一への気持ちを全力でサポートしている。
(左写真=母・初江さんとともに)

 川井は「目標はオリンピック」ときっぱり。成長期の現在の体重から考えると55kg級ということになるが、この階級には吉田沙保里という大きな壁のほか、村田夏南子(東京・安部学院高/JOCアカデミー)や、この日、その村田と大激戦を演じた増田奈千(大阪・堺女子)など、強敵となりうる選手は多い。しかし「怖がらない。自分も頑張ってやっているのだから負けん気を出したい。至学館で練習していれば、絶対に強くなれると思います」と語気を強めた。

 そんな愛娘に、川井さんは「世界カデットも、自分の実力を出し切れば思った通りの結果(優勝)で帰って来てくれると思う。親元を離れる時、『世界を狙います』と言ってくれた。目標に向かって頑張ってほしい」とエールを送った。



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