カナダカップ(女子)報告

 世界学生選手権、カナダ・カップ日本代表チーム監督    
 杉 山 三 郎
 


    


 カナダ・カップは6月30日から7月1日、カナダ・カルガリーで開催されました。2日目の決勝はカナダデー(カナダ生誕日のナショナルホリデー)で、公園のコンサートホールを利用して屋外にて実施され、太陽がまぶしい午後3時から行われました。

 女子の活躍に刺激された男子選手は好調に勝ち上がり、決勝に3選手が進出。55kg級の松永共広選手が世界学生選手権に続いて優勝。「続け」とばかりに、60kg級の松尾大士選手も世界学生選手権で敗れた韓国選手を撃破し優勝の快挙。その韓国選手は世界学生選手権の優勝者でした。96kgの田中章仁選手は決勝へ進みカナダ選手と交えましたが小差判定で惜しくも敗れ2位でした。

 女子は世界学生選手権と階級を変えて出場しました。つまり、吉田沙保里が55kg級、山本聖子が59kg級に出場。中国選手の実力を探る試みにでました。

 結果は両者とも優勝しましたが、際立っているのは吉田のスピーテ゛ーな巧者ぶりで、会場を大いに沸かせました。山本は準決勝で中国選手と対戦。第1ピリオド、リードされたものの、第2ピリオド前半にグラウンドから攻めてフォール勝ち。強さを発揮しました。世界3連覇のアナウンスの中で、日本人離れの容姿もある会場の人気を独占しました。

 48kg級の野口美香は肩の故障の影響もあり、小差の判定勝ち。第2ピリオド、両者得点なしによるクリンチから始まり、相手のバックに回り1ポイント。その後、グラウンドで2ポイントを奪われたものの、すぐに返し3−2のきわどい判定勝ち。51kgの伊調は準決勝の中国選手と対戦が事実上の決勝。世界学生選手権決勝と同じ相手ため研究されており、同点のまま延長へ。そのまま終了2ー2で終了。パッシブ数で勝つ際どさであった。

 63kg級の菅綾子、72kg級の村島文子は一勝するのが精いっぱいであった。

 今後、女子の最大のライバルとあるであろう中国は、北京体育大学が中心でメンバーを構成。これらの選手が世界選手権の中国代表選手を兼ねると言っても誤りではない。世界学生選手権には出場参加資格を偽ると思えるゾン選手(鐘秀蛾=世界V5)の参加があったが、すでに往年の実力はなく、バラバラと失点しカナダカップでは決勝にも参加できなかった。すなわち、48kg級は人材が少なく、彼女に依然頼よらなくてはならないのが現状のようだ。

 強敵で脅威ではあるが、中国全土を上げての強化ではなく上記の大学に選手を集め強化指導されていることが容易に推測できる。技術も体力強化方針もこれまでと大きな変化はない。ただし、参加選手全員が恵まれた体格と体力を持ち、レスリングテクニックも平均以上、全選手にこれといった欠点がないことが挙げられる。軽量級においては圧倒的に日本の方に強さがあり、その存在が目立たない。

 しかし重量級はあなどれない。私見ではあるが、中国の強さの順位は重いクラス順と考えられる。72kgのワン選手は浜口京子の強大なライバルになることは確実である。日本としては7月下旬の世界合宿(世界各国より代表選手を招待し東京と新潟で実施)で実力をうかがう絶好のチャンスである。この合宿を企画立案していただいた連盟幹部に感謝する気持は、アジア大会、世界選手権での結果で表したいと思う。

 すでにアジア大会の代表を決定している日本は、中国とのメダル争いが鮮明なだけに強化スタッフは留意しなくてはならない。



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