「優勝して五輪代表のつもり。負けて代表なんて」…五輪代表決定の池松和彦




 ことしの世界選手権で銅メダルを獲得し、規定で今回の全日本選手権に出場すれば五輪代表に決定という男子フリースタイル66kg級の池松和彦(日体大助手)が20日、計量にパスし、実質的に五輪代表を決めた。

 「全日本選手権に出場すれば五輪代表決定」というお墨付きをもらってはいたものの、「優勝して決定のつもりだった。負けて五輪代表なんて…」と、気持ちを引き締めて全日本選手権に照準を合わせていた。フタを開けてみれば、強豪は階級やスタイルを変えたりし、若い選手ばかり。はた目には、優勝は間違いない状況だ。

 しかし「勝負の世界は何が起こるか分からない。1試合、1試合、集中して戦う」と気合を入れる。全試合圧勝が期待されるが、「意識してしまうと、かえってよくない。攻めていけば、自然と結果は出ると思う」と、努めて自然体を心がけるという。

 アテネ五輪まであと、8ケ月足らず。この大会のあとは、まず体力つくりに力を入れるという。「世界の中では小さい方。筋力アップのトレーニングをやり、(現在は通常71〜72kg)あと1、2kg増やす」が、冬の間の最優先課題。

 同時に海外遠征にも挑むつもり。「グラウンドでもう少し覚えたい技はあるが、自分の技はもう決まっている」として、無理に新しい技をマスターするのではなく、誰が相手でも確実にかけられる決定力の養成が課題。ヨーロッパでの試合の経験が少ないので、欧州の大会参加が希望で、世界選手権の準決勝で負けたロシア選手には「もう1度戦いたい」と、やる気を見せた。

 ただ、試合をできるだけこなして五輪に臨むか、あまり手のうちを明かさずに勝負するかは迷っている状況のようだ。したがって、来年のアジア選手権(4月16〜18日、イラン)に出場するかどうかなどは、今後、コーチと話し合って決めることになるもようだ。

 世界選手権で銅メダルを取ったあと、故郷(福岡県朝倉郡夜須町)には帰っておらず、初の五輪選手誕生にどのくらい湧き返っているかの実感はない。「さあ、どうなのかな?」。ちょっぴり照れた表情を浮かべたが、その時が、初めて五輪出場決定を意識する時ではないか。

 おごらず、プレッシャーに負けず、五輪へ向けて必死の努力を続け、アテネで日本レスリング界と故郷の期待にこたえてほしい。(取材・文=樋口郁夫)



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