【特集】「浜口京子選手と世界選手権決勝で決着戦を闘いたい」…世界V3のスタンカ・ズラテバ(ブルガリア)【2009年2月22日】



 2月14〜15日にブルガリア・バルナで行われた「ダン・コロフ国際大会」の女子72kg級には、世界V3&北京五輪銀メダリストのブルガリアの英雄、スタンカ・スラテバ(25歳)が出場。4者リーグを3戦全勝で圧勝優勝した(左写真)

 ブルガリアが北京オリンピックの全競技で取ったメダル数は5個で、そのうちの4個がレスリング。レスリングは同国を代表するスポーツと言ってよく、その中で、2006・07年の世界選手権を連覇して北京オリンピックに臨んだズラテバは、知らないスポーツ・ファンがいないほどの有名人。今回の会場でも、多くの人からサインや記念写真を求められていた。

 ズラテバに、北京オリンピックの敗戦についてや今後について聞いた(2月15日・大会会場にて。聞き手=樋口郁夫、通訳=セルビア在住・筒井穣)


 ――北京オリンピックの決勝戦についてお聞きしたい。あの試合は、どうされたのでしょうか(中国の王嬌相手にタックル返しに失敗し、押さえ込まれてフォール負け=右写真、青がズラテバ)。

 ズラテバ「それまでの2年間、世界選手権で優勝し、ブルガリアのだれもが私が優勝すると思ってくれていました。それが、プレッシャーとなっていました。決勝は特にそうで、自分の力を出すことができませんでした」

 ――フォールタイムが第1ピリオドの1分59秒でした。あと1秒をしのいでいたら、どうだったでしょうか。

 ズラテバ「第2ピリオドから立ち直ることができ、逆転できたと思います」

 ――決勝の敗北に落ち込むことなく、2ヶ月後の東京の世界選手権に出てきました。激戦の2ヶ月後に、よく出てきましたね。

 ズラテバ「世界選手権はとても重要な大会だと思います。オリンピックでは勝てませんでしたが、世界選手権で勝つことが大事だと思いました。コーチも出るようにアドバイスしてきました」

 ――2ヶ月で気持ちを盛り上げることは、いかがでしたか?

 ズラテバ「それは大丈夫でした。気持ちを切り替え、しっかりと盛り上げることができました」

■世界チャンピオン、シメオン・ステレフとの出会いで実力アップ

 ――2006年ごろから急に強くなっていますよね。何がきっかけでしたか?

 ズラテバ「現在のコーチ(シメオン・ステレフ=フリー62kg級1981年世界王者・88年ソウル五輪3位)に出会いました。彼の指導を受けてから力を伸ばしました。多くの技や戦術など、いいアドバイスをもらうことができました」(左写真=ズラテバのセコンドにつくステレフ・コーチ)

 ――必殺の飛行機投げもですか?(右下写真=今大会でも3度さく裂したズラテバの飛行機投げ)

 ズラテバ「あれは最初から持っていた技です」

 ――2006年6月のゴールデンGP決勝大会でアニータ・シャツレ(ドイツ)に負けたあと、快進撃が続いたようですが。

 ズラテバ「そうです。北京オリンピックを迎えるまで、負けませんでした(注=実際には2007年のヤリギン国際大会、デーブ・シュルツ国際大会、メドベジ国際大会で負けている。世界・欧州・ゴールデンGPなど正式な大会で負けなしという意味だと思われる)」

 ――何連勝していますか?

 ズラテバ「残念ながら、特に数えてはいません」

 ――勝ち続けている間のプレッシャーというのはいかがでしたか?

 ズラテバ「ありました。どんなスポーツ選手でも、試合に臨むにあたってプレッシャーというのはあると思います。でも、マットに上がって試合が始まれば、そのプレッシャーは忘れてしまいます」

■普通の国際大会は、結果にこだわらずに闘うことが大事

 ――今年1月にロシアで行われた「ヤリギン国際大会」に出場して、決勝でロシア選手に敗れましたね。

 ズラテバ「ラスト15秒で逆転負けしました。ちょっとスタミナが続きませんでした。実は大会前、あまり追い込んだ練習をしていなかったんです。試合間隔があいたので、経験を積むために行きました。勝ちをプレゼントしたようなものです。普通の国際大会は、負けても別にどうということはありません。結果にこだわらず闘うことが大切だと思います」

 ――ということは、これからも数多くの大会に出てロンドン五輪を目指しますか?

 ズラテバ「ええ。世界選手権や欧州選手権だけでなく、いろんな大会に出て多くの経験を積み、ロンドン五輪へ向かいます」

 ――聞くまでもありませんが、ロンドン五輪までの目標は?

 ズラテバ「勝ち続けることです。結果は、神のみぞ知る、ですね」

 ――日本で世界合宿があったら、来たいですか?

 ズラテバ「ぜひ行きたいと思っています。去年、東京の世界選手権に行って、素晴らしい運営に感激しました。チームより1週間早く行ったのですが、アキコ・タケダさん(日本協会・武田明子事務局員)にとてもよくしてもらいもしました。日本はとても好きな国です。ぜひ、また行ってみたいと思っています」

 ――日本の浜口京子選手にはどんな印象を持っていますか?

 ズラテバ「世界を5度制していて、偉大な選手だと思います。私の最大のライバルです。人間としてもすばらしい人だと聞いています」

 ――浜口選手には世界選手権で最近2連勝していますが、通算の成績は2勝2敗ですね。

 ズラテバ「その通りです。世界選手権の舞台で決着戦をやりたいですね。組み合わせ次第ですけど、できれば決勝戦で」(左写真=昨年10月の世界女子選手権の表彰式)


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