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【特集】激戦の63kg級に新星誕生!…渡利璃穏(至学館大)【2010年4月5日】

(文=増渕由気子)
 

 ジュニアクイーンズカップのジュニア63s級で優勝したのは、昨年全国高校女子選手権60s級3位の渡利璃穏(りお、至学館大=中京女大が校名変更)だった。

 準決勝、決勝といずれもストレートで勝利。163cmという恵まれた体を生かして豪快なレスリングを展開。2012年ロンドン五輪と2016年リオデジャネイロ五輪を見据えて、今シーズンから五輪階級の63s級にエントリーしたことも明らかにした。

■快勝の内容にもかかわらず、攻撃できなかったことが不満

 女子63kg旧は、2008年北京五輪で五輪V2を達成した伊調馨(ALSOK綜合警備保障)、2008・09年に連続で世界の頂点に立った西牧未央(至学館大大学院)、世界V4の山本聖子(スポーツビズ)と3人の世界女王がひしめいている。ジュニアで頂点に立った渡利は、近い将来、この3人に真っ向勝負が挑めるダイヤモンドの原石だ。

 至学館大の栄和人監督(日本協会女子強化委員長)も「オリンピックを目指せる選手。育てていかなくてはと思っています」と若手の台頭に目を細めた。だが、それだけの逸材のため、一つ一つの課題もおざなりにはしなかった。「もっと攻めてほしいね。体力ももっとつけなければいけない」。

 その師匠の気持ちは、しっかり渡利に届いていた。圧勝で優勝をさらい、63s級への階級アップに手ごたえをつかんでいるのかと思われたが、「まったく(思ったことが)できていない」と喜びのコメントはなし。「決勝は自分から攻撃してポイントを取れなかった。崩してからの両足タックルに入ることもできなかった。監督からは、(相手を)ばらしてこいと言われたのに…」と、圧勝にも関わらず、反省の弁を並べた。

■新旧世界チャンピオンの3強にどこまで迫れるか

 「こんな試合をやっていたら、JOC杯(4月24日、横浜)では勝てない」と自分自身をバッサリと斬った。そこまで気持ちを引き締めることができるのは、渡利にオリンピックの青写真がはっきりと描き出せるようになったからだろう。昨年まではは59s級で闘い、高校の大会は60s級にエントリーしていた。3人の新旧世界女王がひしめき合う最激戦区と言える階級にもかかわらず63kg級にアップしたのは、2年後のオリンピックを見据えていればこそ。

 今年の目標は「世界ジュニア選手権(7月、ハンガリー・ブダペスト)とシニアの世界選手権(9月、ロシア・モスクワ)の両方に行くことです」とビッグな夢を掲げる渡利には、ジュニアクイーンズでの優勝は通過点にすぎない。「ビッグな3人の先輩を今年倒すつもりなんだね?」との問いに、渡利は力強く「はい」とうなずいた。

 島根県出身。同県出身のアニマル浜口さんとは何のつながりもないが、風貌はどこともなしに浜口京子選手に似ている。“浜口京子の再来”と騒がれる日がやってくるか?


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