スポーツ医科学の知見を活かす
-ジュニアレスラーのためのガイドブック2007、2008の活用-

強化委員会、スポーツ医科学委員会委員 久木留 毅


 日本レスリング協会では、国立スポーツ科学センター(JISS)の協力を得て、これまで国が提唱した競技者育成プログラムを推進するため、ナショナルトレーニングシステム(NTS)中央研修会(毎年3月に東京で開催)を毎年実施しています。

 その中では、強化委員会が高校2年生〜3年生の時に習得してほしいと考える基本技術を、フリースタイル、グレコローマンスタイルに分けて指導し、レスラーに必要な知識を提供する目的で、「世界で戦うために」「スポーツ栄養学」「ウエイトトレーニングの基礎知識(実技を含む)」「アンチ・ドーピング」について、JISSスタッフ、日本アンチ・ドーピング機構の協力を得て行っています。

 さらに、スポーツ医科学の知見を有効活用する目的で、エリート選手の身体・体力測定も実施しています
(右写真=NTCでの測定の様子)。測定したデータは、随時、選手にフィードバックして改善点に関する指導も行っています。

 さらに、これらの測定データと全日本チャンピオン、学生チャンピオンの類似のデータを活用してジュニアのためのガイドブックを2年連続で作成し提供しています。今年は、昨年の『ジュニアレスラーのためのコンディショニング2007』に引き続き、『ジュニアレスラーのためのトレーニングガイドブック2008』を作成し、4月のJOC杯ジュニアオリンピック、6月の沼尻直杯全国中学生選手権で参加選手全員に無料配布を行いました。今後、7月の全国少年少女選手権でも配布の予定です。

 レスリングは、日頃から激しいトレーニングを実施しています。さらに、試合前には厳しい減量を行う者も少なくありません。そこで選手は、『コンディショニングブック』の活用により、日頃から自分の体調管理を行ってもらいたいと思います。

 事故が起きたてからでは遅いことは言うまでもありません。そこで、選手と同様に指導者や保護者の方々にも一読頂き、正しい知識の確認を行ってもらいたいと考えています。また、『トレーニングガイドブック』では、レスリング選手に必要な体力について解説を行い、実際に自分と比較できるようにナショナルチームのデータも掲載しています。

 現在、「体力で負けた」という言葉を多くのスポーツ現場で聞きますが、体力のどの部分(スピード、力、パワー、持久力、筋持久力、解糖系・・・等)で負けたのか、選手に明確に説明することが求められています。その意味からも『ジュニアレスラーのためのトレーニングガイドブック2008』を活用して頂ければそのヒントを見つけることができると思います。



《前ページへ戻る》