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【特集】63kg級への肉体改造は順調! 4ヶ月で大きく変わった女子63kg級・山本聖子(スポーツ・ビズ)【2010年4月29日】

(文・公開練習撮影=布施鋼治)
 

 3人の男子トレーニングパートナーと並んだ女子63kg級・山本聖子(スポーツビズ)の身体を見て驚かされた。男子と比べても、なんら遜色がない。肩幅に至っては、むしろ山本の方があるように見える。

 4月25日、東京・馬込の「山本スポーツアカデミー」(YSA)で行なわれた明治乳業杯全日本選抜選手権(5月1〜3日、東京・代々木競技場第2体育館)へ向けての山本の公開練習
(右写真)。YSAレスリング部門の阿佐雄二監督(1978年世界選手権グレコローマン57kg級5位)は、不敵な笑みを浮かべながら「見てお分かりのように、12月の時よりも身体は大きくなったでしょう?」と話した。

 12月とは、山本が63s級に出場した全日本選手権を指す。結果は準決勝で五輪V2の伊調馨(ALSOK綜合警備保障)に黒星。しかし、阿佐監督は「あれは様子見だった」と主張する。「今まで下の階級(復帰前、および復帰直後は59kg級)でやっていたわけですからね。63kg級で闘うためには何が必要なのか。それを自分で確認する必要があったわけです」

■「体重とパワーがつき、スピードもついた」…阿佐雄二監督

 それから約4ヶ月、練習メニューにウエートトレーニングを加えたことで、山本は肉体改造に成功したようだ。その成果は早くも数値によっても現れている。監督はデットリフトを例にあげ、「普通の女子だったら50sがいいところだけど、聖子は65sを10回5セットこなすまでにパワーアップしている」と説明。パワーアップを強調した。

 「一度引退してから1階級上に出場するとなると、相当パワーアップしないとならない。オリンピックを狙うとなれば、なおさらそうでしょう。聖子の場合、ヤリギン国際大会(1月末、ロシア)に出て、自分の力が63sでも通用することがわかった。それが一番の収穫ですね」

 もっとも、山本は自分の身体が大きくなったという自覚はほとんどない。「よく分かりませんね。確かに、背中が厚くなったとはよく言われます。トレーナーについてもらってやっているので、その成果はあるのかもしれません(微笑)」

 パワーアップした分、スピードが落ちたら元も子もない。その部分を突っ込むと、阿佐監督は全然問題ないと言い切った。「体重とパワーだけではなく、スピードも一緒につけた感じ。選手にとって減量は一番のマイナス。減量なしで一杯食べて試合に出られるのが、コンディション的にはベスト。僕は選手に減量させるのは反対なんですよ。ものすごく減量すると、選手は力を出し切れない。でも、全部の力を出し切ったうえで負けるのは仕方ないし、本人も納得できる」

■「私は復帰した身。結果ばかりを追い求めない」…山本聖子

 会見前の公開練習。入念なストレッチのあと、山本はタックルや巻き込み式一本背負いの打ち込みを繰り返す。監督のそばには父の山本郁榮氏もいたが、娘への指示は必要最小限。アドバイスやゲキの送り主は監督が中心だった。

 またさきからフォールというグラウンドの練習になると、「(上に乗って)つぶしてしまえばいい」「相手が仕掛けてきた時には自分も攻められるという意識を持て」と具体的なアドバイスを送る。

 一番注意すべき相手を監督に訊ねると、真っ先に伊調馨の名前をあげた。「ただ、注意するというだけで、僕は勝てると思います。伊調と闘う時には守るな、最初からどんどん攻撃しろと言っています。西牧(未央=至学館大大学院)? 全然問題ないでしょうね」。郁榮氏も相槌を打った。

 その一方で、闘う張本人の山本は慎重だった。現時点で伊調より上回っているところを問われると、「やってみないと分からない」の一点張り。

 西牧について突っ込んでも、そのスタンスが変わることはなかく、「相手が誰というわけではなく、誰が相手でも一生懸命頑張る。私は復帰した身。結果ばかりを追い求めるのではなく、闘っていく中で100パーセントの力を出したい。それができたら、結果はおのずとついてくると思います。今回は、とにかくポイントをとることを意識したい」と控えめに話した
(右写真=伊調と大激戦を展開した全日本選手権)

■プレーオフまでもつれるか、女子63kg級の日本代表争い

 スケジュールの調整が難しいこともあり、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで今年3度行われた全日本合宿にはまだ参加していない。汗を流す場所はYSAが中心。練習パートナーは男子ばかりだ。

 「ジムには女性会員がひとりか2人。さすがにその方々にやっていただくわけにもいかないので…。姉(山本美憂)が相手を務めるのは打ち込み程度。相変わらず動きがすばしっこくて、やっていてイライラします」。時に微笑しながら、ビッグマウスになることは一度もなかった。

 それでも、自信がついているのだろう、全日本選手権の時とはまるで別人。63kg級が行われる5月3日、身心ともに63s級のレスラーになった山本聖子を目撃することになるかもしれない。世界選手権へのキップをかけた闘いは、プレーオフまでもつれるのか。

 《参考記事》
★2010年1月31日: 【特集】63kg級でも世界トップ選手の実力を見せた山本聖子(スポーツビズ)
2009年12月24日: 【特集】善戦するも五輪チャンピオンの牙城崩せず…山本聖子(スポーツビズ)
★10月12日: 【特集】63kg級に照準を定めた山本聖子(クレイジービー)が国内復帰戦で優勝
★8月15日: 【特集】試合中に笑顔も! 最高に幸せな場所で燃えた永島聖子
★8月15日: 永島聖子(旧姓山本=フリー)が復帰第1戦を優勝で飾る…ポーランド・オープン最終日


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